はじめに
細菌、真菌(カビ)、ウイルスは、環境中にいる身近な微生物です。この微生物が体の中で悪さをすることで風邪をひいたり、下痢をしたり、傷口が化膿するといった症状が出ます。今回は、その症状の原因となっている微生物を見つけ出す「微生物検査」について紹介します。
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医療特集
更新日:2018/07/02
解説:
NTT東日本関東病院 臨床検査部 臨床検査技師
深沢 加奈
細菌、真菌(カビ)、ウイルスは、環境中にいる身近な微生物です。この微生物が体の中で悪さをすることで風邪をひいたり、下痢をしたり、傷口が化膿するといった症状が出ます。今回は、その症状の原因となっている微生物を見つけ出す「微生物検査」について紹介します。
尿、血液、糞便、喀痰(かくたん)、咽頭鼻腔ぬぐい液など、さまざまな検体が検査の対象となります。感染症の原因になりうる微生物を正しく検出するために、医師や看護師の指示に従って採取をお願いします。
採取された検体が検査室に届いたら、いろいろな栄養素(糖、血液、タンパクなど)が入った寒天(培地)に検体を塗布し微生物を繁殖させます(図1)。
原因となる菌を見つけるためには、さまざまな培地を組み合わせて原因菌を絞り込みます。発育してきた細菌や真菌の性質(特徴)を調べることで菌の種類を特定し、治療するための薬剤がその菌に効果があるのか否かを調べます。プレート(図2)には菌の種類を調べる試薬と薬剤が入っており、このプレートに菌を接種し、機械(図3)で培養して判定します。培地に菌が発育するには1~2日かかり、有効な薬剤が決まるまでには早くて3~4日かかってしまいます。そのため、検査結果は次回の診察時に説明されることになります。
インフルエンザや肺炎などの感染症を起こす菌を検出する検査では、通常の微生物検査とは違い、検体提出から30分程度で検査結果が出ます(図4)。これは迅速抗原検査という検査方法です。この検査法では、インフルエンザウイルスや肺炎球菌などを検出することができます。しかし、感染していてもウイルスや菌の量が少ない場合には、検査で陰性(-)と判定されることがあります。また、肺炎球菌ワクチンを接種している場合には、感染していなくても検査で陽性(+)と判定されることがあります。
病気の原因菌が判明した場合は治療が開始されますが、薬剤の使用や中断を自己判断で行ってしまうと、原因菌が抵抗力を持ち、薬剤が効かない耐性菌を作ってしまうことになります。必ず医師の指示に従ってください。
本文は、NTT東日本関東病院 広報誌「もしもし」2018年5-6月号に掲載された記事を転載しています。
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