患者ロボット手術とは何ですか?
医師
ロボット手術といっても、医師の代わりに人型ロボットが手術をするわけではありません。ダヴィンチ(da Vinci)という、アメリカで開発された手術支援ロボットを用いて、医師が操作して行う手術です。
当院では、2015年12月に最新機種のda VinciXiを導入し、6月末時点で80例を超える前立腺全摘除術を行っています。
ここから本文です
医療特集
回答:
NTT東日本関東病院 泌尿器科 医師
渡辺 洋志
医師
ロボット手術といっても、医師の代わりに人型ロボットが手術をするわけではありません。ダヴィンチ(da Vinci)という、アメリカで開発された手術支援ロボットを用いて、医師が操作して行う手術です。
当院では、2015年12月に最新機種のda VinciXiを導入し、6月末時点で80例を超える前立腺全摘除術を行っています。
医師
泌尿器科以外にも、婦人科、心臓血管外科、胸部外科、小児外科、耳鼻科および一般消化器外科など、あらゆる診療科の手術に対して利用可能ですが、日本の保険診療として認められているのは、現時点で前立腺全摘除術(前立腺がん)と腎部分切除術(腎がん)のみです。そのため、泌尿器科を中心に急速に広まっています。現在、日本には約200台のダヴィンチが導入されています。
医師
ロボット手術の特長としては下記が挙げられます。
前立腺は骨盤の底に位置し、表面周囲に多くの静脈が張り巡らされています。また、前立腺近傍には、勃起をつかさどる神経や、排尿の締りを調整する筋肉もあります。従来の開腹による手術では、出血、術後の勃起障害や尿失禁が問題となっていました。出血は静脈からがほとんどであり、圧力をかけると容易に抑えることができます。
腹腔鏡下手術では、気腹(お腹に二酸化炭素ガスを充填させる)によって出血を抑え、内視鏡を用いた拡大視野での操作によって術後の勃起障害や尿失禁を軽減することができました。ただ、この手術では鉗子という長い手術器具を使用して手術を行うのですが、手術操作がやや困難なものでした。例えて言うと、菜箸を用いてご飯を食べるようなものです。また、人の腕の動きの可動域や細やかさには限界があります。特に、対象臓器の裏側の操作などは非常に困難なものでした。
腹腔鏡下手術での上記欠点や限界を克服したのが、ロボット手術です。腹腔鏡下手術と同じように、お腹にガスを充填させて出血量を軽減します。ロボット手術で用いる鉗子には関節がついており、あらゆる角度での操作が可能です。また、術者の手の動きに対するロボットの鉗子の動きの比率を小さくすることができ、手振れの防止および人の動きの細かさの限界を越えた精緻な操作が可能となりました。従来では想定できなかった質の高い手術が可能となっています。
医師
患者さんの持病や以前受けられた手術の内容により、開腹手術が選択されることもあります。また、夢のような手術機械ではありますが、大変高額です(1台約3億円 年間維持費数千万円)。
保険診療ですので患者さんの負担は大きくは変わりませんが、病院の収益としては黒字が見込めるものではありません。資金の融通が利く医療機関でないとなかなか導入が難しいのが現状です。
本文は、NTT東日本関東病院 広報誌「もしもし」2016年7-8月号に掲載された記事を転載しています。
情報提供元 : (C)NTT東日本関東病院
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。