患者最近、痛み止めとして複数の薬を処方されます。どうしてでしょうか?
医師
以前は痛み止めというと炎症を抑える作用のある非ステロイド系消炎鎮痛剤、もしくは安全性が高く、脳などの中枢で作用する薬剤(アセトアミノフェン)や麻薬に限られていました。処方のしかたも複数の薬剤を使用するというより薬剤を変更することがもっぱらでした。Aという薬剤が無効ならBという薬剤に変えるという考えでした。しかし、近年の研究により慢性痛とは複数の種類の痛みが混合していることがはっきりしてきました。後述する侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3つです。
新しい薬剤はターゲットがしぼってあります。そこで痛みの種類を分析し、その薬剤が作用するところを考慮して、処方します。そのため使用薬剤も複数になることが多くなっています。また複数で使用することで1種類だけ大量に使用するより副作用が少なくなる利点もあります。
患者痛みの種類をわかりやすく説明してください。
医師
痛みは知覚神経経路のどこかが損傷しているかどうかで3つに分類されます。
①は神経系に障害はなく、神経の先端にある受容体近くに炎症がある場合のいたみです。消炎鎮痛剤が有効な痛みです。炎症が治まれば痛みも消失することが多いですが、腰椎、膝関節、股関節といった重量や常に負荷がかかるところでは炎症が持続し、慢性化する場合があります。
②は神経障害が原因で出現します。神経に傷がつくと痛み情報があたかも水道管の漏水や電線の漏電のように常時脳の痛み中枢へ伝わり、痛みが増強してしまいます。帯状疱疹後神経痛などがこれに当てはまります。最近の新薬は脳や脊髄に作用し、鎮痛効果を発揮します。ただし、眠気、ふらつき、吐き気、便秘といった副作用が出ることが多い薬剤です。服用後1~2週間でそういった副作用は消失することが多いのですがその後も副作用が継続する方もいます。主治医と相談しつつ、少しずつ内服することが望ましいでしょう。
③は脳、脊髄、末梢神経いずれにも問題がないものの痛みが継続するもので、心理的要素が考えられる痛みです。ただし、この痛みの中にも脳の機能異常によって痛みとなっているものがあることが最近研究から明らかになりつつあります。また、痛みが継続することで気分が落ち込み、その結果痛みが増加することもよくあることです。
患者これらの新しいくすりは胃を荒らすのですか?
医師
くすりのすべてが胃を荒らすわけではありません。以前からの消炎鎮痛剤と異なり最近の新薬は胃を荒らす作用はありません。疑問がある場合、処方した主治医に十分説明を受けることが大事です。

図:臨床的疼痛の構成
本文は、NTT東日本関東病院 広報誌「もしもし」2013年1-2月号に掲載された記事を転載しています。
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