ページ内を移動するためのリンクです

その胸やけ、もしかしたら・・・逆流性食道炎 - 検査と治療、がんへの進行 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


ここから本文です

医療特集

その胸やけ、もしかしたら・・・逆流性食道炎 - 検査と治療、がんへの進行

逆流性食道炎の検査と治療、食道がんとの関係などについて伺いました。

NTT東日本関東病院 消化器内科 部長 松橋 信行

お話を伺った先生:

診断・検査

何科を受診したらよいか

冒頭で述べたような自覚症状があり、それが長期間続く場合、受診をおすすめします。胸やけなどの自覚症状がよくあるものの、OTC医薬品(薬局などで購入できる、一般用医薬品のこと)などで症状を抑えるだけで何もせずにいて、数年後にがんが見つかったというケースがないわけではありません。

「正確な診断のために、まずは一度医療機関を受診して内視鏡検査を受けることが適切です」と、松橋先生はこうした方へ内視鏡検査の重要性を強調します。

内視鏡検査は逆流性食道炎だけでなく、胃や食道のがんの検診手段としても有効です。最近は大きな病院へ行かなくても、身近な医院でも内視鏡検査を受けられるところが増えています。気になる症状がある場合は、まず内科や消化器内科を受診して内視鏡検査の必要性も含めて診断を仰いでみましょう。

内視鏡検査による診断

逆流性食道炎は、健康診断の血液検査などでは見つけることはできません。胃食道逆流症全般は、上部消化管内視鏡検査で診断を行います。

逆流性食道炎は粘膜障害の広がりで見た食道の炎症の程度(重症度)によって軽度(グレードA)から最重度(グレードD)までの4段階に分類されます。(正常に準ずるグレードM、グレードNを含めて6段階とすることもあります。)

重症度の分類(ロサンゼルス分類 改訂版)

Grade 状態
Grade N 内視鏡的に変化を認めないもの
Grade M 明らかなびらんや潰瘍がなく、発赤や白濁だけを認めるもの
Grade A 食道粘膜に異常が見られ、長さが5mm以内の粘膜障害を認めるもの
Grade B 長さが5mm以上の粘膜障害があり、相互に癒合しないもの
Grade C 粘膜障害が複数の粘膜ひだにわたって癒合し、食道全周囲の75%を超えないもの
Grade D 食道全周囲の75%を越える粘膜障害を認めるもの
  1. Grade NGrade N
  2. Grade MGrade M
  3. Grade AGrade A
  4. Grade BGrade B
  5. Grade CGrade C
  6. Grade DGrade D

服薬による診断

内視鏡検査を行えない場合などに使われる方法です。治療薬としても用いるプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を服薬してもらい、一定期間に症状が改善するかどうかを確認します。胸やけなどの症状が改善されれば、逆流性食道炎や非びらん性胃食道逆流症の可能性があると診断されます。

24時間pHモニタリング

24時間pHモニタリングという検査もあります。ただし、これは手間がかかる検査のため、実施しているのは設備の整った一部の医療機関に限られます。先端に小さなpH測定装置のついた細い管を鼻孔から食道内に入れて、24時間pHを記録するもので、どのようなときに胃酸が分泌されるのか、また胃液の量がどのように変化するかなどを詳細に調べることができます。

内視鏡検査が苦手な方へ

内視鏡検査がつらい、という方は少なくないと思います。最近はより細くなった管を鼻孔から入れる経鼻内視鏡も普及して、楽になったといわれる方が増えています。また、眠気を起こす鎮静剤を注射してから検査を行う方法も行われています。ただ、どれにもメリット・デメリットがありますので注意してください。遠慮せずに医師に申し出て十分に相談のうえ、自分に合った検査方法を選択するようにしてください。

治療と経過

グレードAの治療

最も多いのは、人間ドックの内視鏡検査などにより、ごく軽いグレードAという段階で見つかる場合です。

「すぐ薬で治したいと考える患者さんもいますが、私はこの段階の方には、まず生活習慣の改善を試みることをすすめています」(松橋先生)

糖尿病や高血圧などは、たとえ自覚症状がなくても合併症に至らないように治療する必要があります。しかし逆流性食道炎の場合、バレット食道を除き、軽度の胸やけや胸のつかえ程度であれば、慌てて薬を飲まなくても大きな影響はありません。

生活習慣の見直し

肥満が原因で食道炎が起きている場合は、食習慣を改める、やせるといったことで、薬を使わずに治るケースがあるそうです。また、普段から姿勢に気をつけることも大切です。

食生活では、過食しない、脂肪分を取り過ぎないことはもちろんですが、それ以上に大事なのは規則的に食事を取ることです。朝食はとらないことが多い、食べ過ぎたときは次の一食を抜く、といった不規則な食生活は最も好ましくありません。1日3回規則的な食事をすれば、胃酸の分泌も規則的になるはずです。

また、禁煙と飲み過ぎないことも重要です。こうした生活習慣の改善は、他の多くの生活習慣病についても有用なため、多方面にわたり役立つはずです。

就寝時の姿勢も関係することがあります。松橋先生は「寝ている間に逆流をしにくくするためには、上半身を高めにするように」と助言します。

グレードB以上の治療

上記の生活習慣の改善に加え、胃酸の分泌を抑える薬の服用が基本です。一般にプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬が用いられます。胃酸分泌にかかわるプロトンポンプという分子の働きを抑える薬です。先に述べた服薬による診断でも用いられる薬です。

グレードDといった重度の逆流性食道炎になると、炎症部分から大量に出血することもあり得ます。そうなると命に関わる危険がないとも言えませんから、もちろん積極的な治療が必要です。

治療薬の種類

PPIには数種類ありますが、どれも1日1回の服用で24時間作用が持続します。胃酸を抑える薬には、H2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)という薬もあり、処方箋がなくても購入できるOTC医薬品として売られている物もあります。軽い胸やけのような症状の場合には、OTC医薬品でも改善することがあります。

ただし、松橋先生は「本当は悪い病気が隠れているのに、OTC医薬品を飲んで症状が良くなったと検査しないままに終わってしまうと、何年か経ってがんが見つかる可能性もあり得ます。症状がある人は、一度で良いので内視鏡検査を受けることをおすすめします」と語ります。

服薬期間

炎症に対しては特別な治療はなく、胃酸を抑えれば、ほぼ自動的に炎症も治まってきます。1~2週間服薬を続ければ症状は治まり、食道炎は治るのが一般的で、その後再度内視鏡検査を実施するには及びません。

このように、炎症は薬で抑えることができますが、逆流自体を薬で治療するのは困難です。一度ゆるんだ括約筋を締まるようにするのは難しいからです。ただし、肥満が原因で逆流性食道炎を発症している人が熱心に減量に励んで成功した場合、全く元どおりとは言えないまでも、薬を使わずにすむ程度まで症状が改善する可能性があります。

逆流症状が治まれば休薬し、症状が出たときや激しいときなどに必要に応じて服用することもできます。PPIもH2ブロッカーも長期処方ができるようになっているので、症状が強い場合は継続して飲み続けることもできます。

長期服薬による身体への影響

PPIは深刻な副作用が多い薬剤ではありませんが、骨折、認知症、ある種の腸炎、心筋梗塞などのリスクを高める可能性も指摘されているので、長期服用に際しては一定の注意も必要です。

また、治療薬で胃酸を抑えたことが直ちにトラブルに結びつくことはほとんどありませんが、タンパク質の消化能力がやや衰える可能性があります。また、胃酸には食物と共に入ってきた細菌の殺菌作用もありますが、この作用も抑えてしまうことから腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)にも影響を与える可能性があり、それにより種々の疾患に関わることが考えられます。今後、そうしたメカニズムの解明が進んでいくことが予想されます。

手術による治療

重度の食道炎で薬物治療の効果が不十分な場合、外科治療(手術)もあります。胃底部のゆるく伸びやすい部分を引っ張って食道の後ろから噴門に巻き付け、食道からの流れを妨げないように、逆流しにくくするもので、腹腔鏡下で負担の少ない形で行われるのが一般的です。日本ではまだ少ないですが、欧米では多く行われています。

食道がんとの関係

逆流性食道炎そのもので生命が脅かされるような害が起きることはほとんどありません。しかし、前述したバレット食道になると、それを母地として腺がんというタイプの食道がんを起こす率が多少高くなります。バレット食道が、どのぐらいの年月をかけて伸展し、発がんにまで至るかについては、まだはっきりと解明されていません。松橋先生は「定期的に内視鏡で見ていると、一部にはどんどん伸びていくバレット食道もありますが、そのような例は比較的まれで、大半の人は数年経っても最初に見たときとそう変化がありません」と語ります。

バレット食道と診断された場合

ただし、食道の半分以上がバレット食道になってしまったような場合は、確実に発がんリスクが高まるとされます。また、バレット食道に気づかないまま食道がんが見つかる人も少なからずいます。

もし、3cm以上のバレット食道があると診断されている人は、年1回は内視鏡検査を受けて経過を観察することが重要です。短いバレット食道であれば、3年に1回程度の頻度でも構わないとされます。

食道腺がんを予防するために

食道がんは、進行すると喉元がつかえるなどの症状が出てきますが、そうなるまではがんによる症状は出ないので早期発見が難しいがんの1つです。早期発見できれば、内視鏡で切除することも可能です。

松橋先生は「逆流症状がある人、胸やけがある人は、一度は内視鏡検査を受けること。また、長いバレット食道がある人は、きちんと経過をフォローしてください」と呼びかけます。すべての食道腺がんが、これで予防あるいは早期発見できるわけではありませんが、十分意味のあることだと言えます。

PPIで食道炎を抑え続けることで食道腺がんを予防できるかどうか、まだわかっていません。また、アスピリン等の抗炎症剤の食道腺がん予防効果が示唆されていますが、これもまだ確立されたものではありません。

増加が予想される食道腺がん

日本では、食道がんと言えば扁平上皮がんが圧倒的に多く、バレット食道から変化する腺がんはごく少数ですが、確実に増加していることも事実です。重度の逆流性食道炎が多い、肥満大国のアメリカでは、既に腺がんの患者数が扁平上皮がんを上回っています。

バレット食道は日本ではまれな病気でしたが、21世紀に入った頃から急増していることから、10~20年後には、日本でも食道腺がんが急増している可能性が十分あると考えられています。このため、日本消化器内視鏡学会では3cm以上のバレット食道について全国登録をして経過を追跡することを呼び掛けています。

まとめ

逆流性食道炎は、生活習慣の改善である程度予防が可能な病気です。

「肥満にならないこと、規則正しく栄養バランスの取れた食習慣に努めることが、最も重要なことです。また喫煙や過剰な飲酒を避けることも大切です。」(松橋先生)

食道炎の症状に気づいたら

胸やけなどの自覚症状があって困っているという人は、まず、かかりつけの内科などを訪ねてみてください。一般に逆流性食道炎は、軽度ならば身近な医院で治療を続けられる病気です。ただし、服薬治療して症状が良くなった人も、悪い病気が隠れていないか確かめるために、一度は内視鏡検査を受けるようにしましょう。

典型的でない症状の場合も

一見すると、消化器とは無関係に見えるような症状が起こることもあります。頑固な咳で困っているという人が、よくよく調べてみたら、胃酸の刺激が咳の原因になっていたということもあります。また、喉がつかえるといった症状を訴えて、耳鼻咽喉科を受診する人もいます。

胸から心窩部(しんかぶ:みぞおちのあたり)にかけての痛みを起こす人もいます。胸痛は、心筋梗塞や狭心症といったもっと深刻な病気でも起きるので、放置しないほうがいいでしょう。

  • 1
  • 2
松橋 信行先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 消化器内科 部長 松橋 信行

NTT東日本関東病院 消化器内科 部長

取得専門医・認定医

  • 日本内科学会認定内科医・内科指導医
  • 日本消化器病学会専門医・指導医
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医

医学セミナーのご案内

NTT東日本関東病院 人間ドックキャンペーン

セルフメディケーション税制とは


ここからフッター情報です

iタウンページ&タウンページコンテンツ
iタウンページコンテンツ

ページはここまでです

ページの先頭へ戻ります