ページ内を移動するためのリンクです

手指の痛み - 手根管症候群、ばね指・ドケルバン病 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


ここから本文です

医療特集

手指の痛み - 手根管症候群、ばね指・ドケルバン病

更新日:2018/04/13

腱や靭帯に関わる病気「手根管症候群」と「腱鞘炎」についても伺いました。また、手指の障害の予防、日常生活で気を付けることについてご紹介します。

NTT東日本関東病院 整形外科部長、手術部長 大江 隆史

お話を伺った先生:

腱や靭帯に関わる病気

腱や靭帯が硬くなることに関連して生じるのが、「手根管症候群」と「腱鞘炎」です。腱鞘炎の中でも多いものが「ばね指」と「ドケルバン病」です。

女性は、更年期に症状が多く現れるほか、妊娠中・出産後にもみられます。妊娠・出産時期に起こるのは、女性ホルモンの急激な変化が関係していると考えられていますが、出産後しばらくするとホルモン分泌が元に戻るので、手術に至るほど悪化することはないと考えてよいでしょう。

手根管症候群

手根管とは、手首の付け根にある骨と手のひら側の横手根靭帯(おうしゅこんじんたい)に囲まれたトンネル状の部分をいいます。このトンネルはとても狭いのですが、中には指を動かす腱と、母指から環指の半分までの感覚を担っている正中神経(せいちゅうしんけい)が通っています。

靭帯が硬くなるなどの原因によって通りが悪くなり、正中神経が圧迫されて痛みやしびれが起こるものが手根管症候群です。示指、中指を中心にして痺れや痛みが生じ、環指や母指にまで及ぶこともあります。

環指の小指側半分と小指には尺骨神経(しゃっこつしんけい)が通っており、この部位には痺れが生じないという特徴があります。

図2 手根管

図2 手根管

また、症状が進んでくると母指球(母指の付け根のふくらみのことで、筋肉(母指球筋)がある)が萎縮して痩せてきます。すると、例えば、縫い物やボタンをかけるなどの、母指と他の指を使った細かい作業ができにくくなります。母指の一番大事な「つまむ」という動作がしづらくなり、母指と示指を丸めた“OK”サインのようなポーズも作りにくくなります。

母指球は徐々に痩せてくるために、「使いづらい」と訴える人の母指の付け根を見ると、ふくらみがほとんどなくなっていたということもあります。意外ですが、指摘するまで本人も気が付かないのです。初めは痛みがあってもそのうちに無くなって、そのままにしているうちに進行して動かなくなってくるのです。

つまむ動作ができなくなってきた人は、一刻も早く手術をしないと回復が難しくなります。これは、神経と筋肉をつなぐ神経筋接合部に神経伝達物質が流れない状態になっているためで、神経筋接合部がなくなってしまうと、神経が回復しても筋肉が動かせなくなってしまいます。

こうした症状は、更年期女性のなかでも痩せ形ですらっとした女性に多く見られます。女性ホルモンには脂肪由来のものもありますが、脂肪が少ないために、更年期に女性ホルモン量が急激に下降するためと見られています。

なお、手根管症候群は“症候群”であり、手根管内にできた腫瘍など他の病気が原因でも起こります。糖尿病の人や人工透析を受けている人は、男女を問わず起こることがあります。

ばね指

指が曲げ伸ばしできるのは、腱(屈筋腱:くっきんけん)の働きによるものですが、腱はそれが浮き上がらないように靱帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)によって抑えられています。靭帯が硬くなるなどして腱が通りにくくなり、炎症が起きると、指の付け根が腫れて熱を持ったり、痛みをもたらしたりします。これが腱鞘炎(けんしょうえん)です。

腱鞘炎が進行すると、指が動かしにくくなります。動かそうとすると引っ掛かり、伸ばそうとするとばねのように跳ね上がるという現象が現れ、これを「ばね指(弾発指:だんぱつし)」と呼びます。さらに進むと、指が曲がってしまったまま動かなくなってしまいます。母指、中指、環指に多く起こります。

ドケルバン(ドゥケルヴァン)病

母指を動かすいくつかの腱のうちの2本が、手首の母指側にある腱鞘の部分で腱鞘炎をおこしたものが「ドケルバン病」です。手首に腫れや痛みが生じ、母指を動かしづらくなります。

母指の使い過ぎが原因の1つになり、やはり更年期女性に多いのが特徴です。

【関連】狹窄性腱鞘炎(ドゥケルヴァン病)(病気事典)を読む

検査と診断

整形外科(あるいは手外科)では、腱鞘や手関節を軽く叩いて痛みや痺れを見る検査、母指や手関節を屈曲させて症状を見るといった検査によって診断します。

腱や靭帯の治療

手根管症候群や腱鞘炎では、硬くなって肥厚してしまった腱や靭帯の状態を改善するための治療方針は共通しており、以下の3段階の治療が行われます。

安静を保つ

腱の炎症による通過障害を改善するためには、まず、指を使用する頻度を減らすことです。といっても、手指を使わずに生活するのはなかなか難しいことでしょう。

また、手根管症候群の場合は、就寝中に手首の安静のために、取り外しのできる装具やギプスを巻くといった保存的な治療もあります。

ステロイド注射

手指の使用頻度を減らしても効果が得られない場合は、靭帯を軟らかくし、炎症を抑える治療をします。手根管や指にステロイド剤を注射で局所注入するもので、あまり頻繁には行えない治療ですが、効果はだいたい半年ぐらい持続します。

糖尿病が背景にあって腱鞘炎を起こす人は、そうでない人に比べて、注射が効きにくいことが知られています。また、再発も多いので、もし1回注射をして効き目が得られない場合は、手術を検討します。

腱鞘炎やばね指は、2~3年注射を打ち続けることで、手術にまで至らないという人が圧倒的多数です。一方、手根管症候群は、手術に至る人の割合も少なくありません。

外科手術

ステロイド注射をしても効果が不十分だったり、進行したりしている場合には、外科手術が勧められます。手根管症候群では、数センチほどメスを入れて靭帯を切り開き、正中神経の圧迫を取り除きます。

これらの手術は、日帰りで行うことが可能です。ただ、相応の痛みを伴います。手の感覚はとても鋭敏で、指先はわずか2mmしか離れていない物を認識することができます。膝はせいぜい2cm、二の腕であっても1cm程度だといわれています。小さな切開の手術であるにもかかわらず、痛みが強いと感じるのはそのためです。

手術において重要なのは、術後は痛みがあっても指を動かすことです。3週間ぐらいそうした術後療法を続けないと、切開した部分で腱が癒着してしまい、指がうまく動かせなくなってしまいます。そうしたことをきちんと理解した上で、手術を受けていただきます。

手根管症候群では、手術をすれば麻痺はゆっくりと改善します。

手指の障害の予防

更年期に伴う症状の場合、急激にホルモンが減少する10~15年を過ぎると、その後症状は落ち着いてきます。しかし、痛みがある時期は、安静にするなどの予防が重要となります。

日常生活で気を付けること

まず、普段から手指の負担を減らすよう心がけましょう。

身近な例を挙げると、様々な袋状のパッケージがひと昔前より強固になったような気がしませんか。密着度が向上して品質の維持に役立っている代わりに、簡単に手で破ったり引きちぎったりしていたことに、これまで以上の力が必要になっています。包装パックなどは、無理をせずはさみを使って開けるようにしましょう。

ペットボトルのキャップや瓶の蓋などを開けるときにも、無理にこじ開けようとせず、力を補助する便利なグッズが販売されていますので、活用するとよいでしょう。

また、関節の変形が始まっている場合は、これ以上進行させないために、安静にすることが大切です。特に関節が腫れてぐらぐらしている時期に無理をすると、関節が緩んでしまって指が横を向いてしまうといったことがあります。そうなると治療も難しくなります。

痛みや腫れがあっても仕事などでどうしても指を使わなくてはいけない時は、テーピングをすすめています。医療用やスポーツ用に、伸縮性のある「テーピングテープ」が薬局などで市販されています。痛む箇所に作業前に巻き、保護するようにしてください。

その他

明確なエビデンスはありませんが、大豆イソフラボンのような女性ホルモンに似たサプリメントや、更年期障害があるのであればホルモン補充療法(HRT)などで症状が軽くなる場合もあります。

最近は、スマートフォンの使い過ぎなども、腱鞘炎に悪影響があるのではないかと考えられています。若くて筋肉や関節がしなやかな人は、よほど酷使するのでなければ問題が生じることは少ないですが、中高年の方は気をつける必要があるでしょう。

健康長寿のために身体のメンテナンスを

医療の進歩などによって、日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えています。一方で、更年期にともなって手指が痛む病気が増えてくるように、50歳くらいを節目として身体の様々なところに不具合が生じるようになります。

“人間50年”と歌われていた時代に比べて医療は急速に発展しましたが、人間の身体そのものは大きくは変わっていません。ですから、70歳、80歳…と健康に長生きするためには、運動器に限らず、身体のメンテナンスを時々しながら大事に使っていくことが大切です。

手外科について

筋肉や骨などの疾患は整形外科が専門としていますが、手には運動器外科に関するあらゆる組織が精緻な構造で存在しているためとりわけ専門性が高く、手術もマイクロサージャリー(顕微鏡を用いた微細な手術)で行われるなど、より専門的な技術が必要となります。このように、手を専門的に扱うのが手外科専門医です。

手外科専門医は、日本では整形外科あるいは形成外科の中の専門領域で、整形外科または形成外科の専門医資格を取得した後に、指定医療機関で手外科に関する特別な研修を受け、日本手外科学会専門医試験に合格したスペシャリストです。したがって、手外科専門医は、整形外科、形成外科全般の経験に加え、手外科の診療に関し深い知識と経験を有しています。

手外科専門医による専門的な診療を希望される場合は、日本手外科学会のホームページで調べることができます。また、NTT 東日本関東病院など「手外科」という専門の科目や外来を置いている医療機関もあります。

  • 1
  • 2
大江 隆史先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 整形外科部長、手術部長 大江 隆史

NTT東日本関東病院 整形外科部長、手術部長

取得専門医・認定医

  • 日本整形外科学会専門医
  • 日本手外科学会手外科専門医

ここからフッター情報です

iタウンページ&タウンページコンテンツ
iタウンページコンテンツ

ページはここまでです

ページの先頭へ戻ります