ページ内を移動するためのリンクです

若い女性に多いバセドウ病 - 治療とその後 病気を知ろう 医療特集 - メディカルiタウン


ここから本文です

医療特集

若い女性に多いバセドウ病 - 治療とその後

バセドウ病の治療には、薬物療法、手術療法、アイソトープ治療と、大きく3つの種類があります。それぞれの治療法について、また仕事や日常生活、妊娠・出産への影響など、気になることについても伺いました。

NTT東日本関東病院 仁科 祐子

お話を伺った先生:

ホルモン合成を抑える治療

服薬を2~3年続けホルモン正常化を目指す

薬物療法は、甲状腺ホルモンの産生を抑えるような抗甲状腺薬を内服するもので、まず、日本は圧倒的に多くの人(9割以上)が、この治療を選択します。最低でも1年から数年間の服用が必要になりますが、2~3年続けると、約半数の人は、薬をやめられるまでに甲状腺ホルモンが正常化します。

日本甲状腺学会のガイドラインでは、1日3回(ホルモンのレベルにより、1回1~2錠)服薬から開始して、徐々に減らして2~3日に1回ほどにして、最終的に薬が不要になることを目指します。

「決められた量の服薬を開始すると、2~3カ月以内に90%が正常化してきます。脈が緩やかになり、自覚症状が改善したことを実感してもらえるはずです」(仁科先生)

使える薬には2種類あり、いずれもホルモン合成を阻害する薬です。バセドウ病の原因と考えられているTSH受容体抗体にまで働きかける薬ではないので、根本的な治療と言うより、症状を抑えることを目指した治療です。ホルモンが正常化するまでの期間と副作用を比較し、学会ガイドラインでは、チアマゾール(メルカゾール®)を最初に投与する薬(第1選択薬)にしています。ただし、この薬を妊娠初期に服薬した場合、胎児に奇形を生じる危険性が報告されているため、妊娠初期の患者さんには、もう1つのプロピルチオウラシル(プロパジール®もしくはチウラジール®)という薬を用います。

薬の減量は経過を見ながら医師の判断で

いつ薬をやめられるのか、そのタイミングを確実に診断できるマーカーはありません。このため、医師が経過を見ながら判断し、より少ない量でもホルモンの正常範囲が維持できるかを確かめながら、減らしていくことになります。

「自己判断で減らしたり、やめたりすることなく、きちんと診察を受けることが大切です」(仁科先生)。後述しますが、妊娠など個々の事情も含め、医師と相談し納得したうえで治療をすすめていくことが欠かせません。

無顆粒球症

0.1~0.5%の割合で、無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう)という副作用が出ることがあります。服薬中いつでも起こり得ますが、飲み始めて3カ月以内に発症することが多いので、服薬を開始した初期には、2~3週間ごとに通院して、チェックしてもらうことが大事です。

顆粒球は、白血球の分画の一つで「好中球・好酸球・好塩基球」のことです。顆粒球の大半は好中球で、好中球が0に近い状態にまで減少したものを無顆粒球症と呼びます。無顆粒球症は、白血球数(特に好中球数)が大きく減少するため抵抗力が落ちて感染しやすくなる病気で、のどの痛みを伴う高熱が出るなどの症状があります。もしも症状がでたら、一旦内服をやめて受診し、血液検査で白血球数や好中球数を測定してください。

他の治療法を検討する場合

症状が軽い人、甲状腺の腫れが小さい人では、抗甲状腺薬の効果が得られやすいです。しかし、薬の効果が不十分な場合や、無顆粒球症のような重大な副作用が出て服薬が続けられない場合などは、他の治療法を検討することがあります。

甲状腺を小さくする治療

外科手術とアイソトープ治療は、実施できる施設が限られますので、専門的な医療機関に紹介をして行う場合があります。バセドウ病では個々の甲状腺細胞がホルモンを作り過ぎていますが、甲状腺を小さくして細胞数を減らせば、作られるホルモン量も減らすことができます。手術は、それを体外から行う治療であり、一方のアイソトープ治療は、体内から行う治療です。

1 手術

甲状腺腫に腫瘍を合併している場合、内服薬やアイソトープ治療ができない場合、甲状腺腫が大きい場合、また早く確実に治したいという場合には、手術を選択します。

一般に、甲状腺の一部を残して残りを切除するという亜全摘(あぜんてき)術が行われ、機能の一部は残すことができます。場合によっては、甲状腺を全部切除する手術(全摘手術)が行われる場合もあります。

バセドウ病は甲状腺の血流量が豊富なので、手術中の出血も多くなりがちです。手術前にはヨウ素を多く投与してホルモンの合成を抑え、血流を減らすようにすると、出血量を減らすこともできます。入院して全身麻酔で行う手術ですが、1週間ほどで退院できます。

亜全摘術後、甲状腺機能が一時的に低下するような場合は、甲状腺ホルモン剤を内服することがあります。全摘術の場合は、生涯、甲状腺ホルモン剤を飲み続けることになりますが、適切に服用すれば、副作用のほとんどない薬です。

「手術治療では、傷跡が残ってしまわないか気になると思いますが、首のしわに沿ってメスを入れるので、そう目立ちません。手術後しばらくは、ハイネックを着たりして、カバーされるといいようです」(仁科先生)

2 アイソトープ治療

アイソトープ治療は、放射性ヨウ素のカプセルを1回だけ服用して、甲状腺を内部から破壊する治療です。服用したヨウ素は甲状腺に集まること、そもそも放射線量が低いことから、身体への影響はほとんどありません。

治療後半年たてば、妊娠にも問題がない安全な治療ですが、妊娠・授乳時期には受けられません。また、18歳以下の場合は、慎重に話し合って決めます。この治療は簡単で、手術のように傷が残ることもありません。再発はしづらいのですが、逆に治療から数年以上経ってから甲状腺機能低下症になって、甲状腺ホルモン剤が必要になる場合もあります。しかし先述のように、甲状腺ホルモン剤は副作用の少ない安全な薬です。

「それぞれの治療法には、長所と短所があります。主治医と十分相談しながら、ご自分に合った方法を選択してください」と、仁科先生は助言します。

表2 バセドウ病の治療
治療法 長所 短所
薬物療法 薬を飲むだけでよい。
甲状腺機能低下症になっても戻る。
副作用があり得る。
治療が長期にわたる。
再発が多い。
アイソトープ治療 カプセルを1回飲むだけでよい。
薬物療法に比べ短期間の治療ですむ。
副作用、合併症がほとんどない。
甲状腺の腫れが小さくなる。
再発が少ない。
治療を受けられる施設が限られている。
甲状腺機能低下症になりやすい。
手術 確実に治療効果が得られる。
甲状腺の腫れが小さくなる。
再発が少ない。
手術の跡が残る。
専門の施設が限られている。
甲状腺機能低下症になりやすい。
出典 バセドウ病アイソトープ治療Q&A
(日本甲状腺学会「バセドウ病131I内用療法の手引き」作成委員会編集)

治療中、治療後の生活

治療中でも日常生活はそれほど制限されない

「甲状腺ホルモンが過剰なときは頻脈になりますが、例えば、脈拍が100以上に上がっているときは、実際には座っていても、脈拍数としてはジョギングしているようなレベルです。そうしたときにさらに運動をすると、心臓などに与える負荷が大きくなりすぎるので、控えてください」(仁科先生)

また甲状腺機能が安定しない間は、大きな検査や手術治療は控える必要があります。それ以外は治療中・治療後とも、仕事や日常生活について制約はほとんどありません。

ホルモンが正常化すれば妊娠も可能

若い女性が多い病気ということで、結婚や妊娠に対して、不安を抱いている人も多いでしょう。しかし、バセドウ病は、きちんと治療して、甲状腺ホルモンの分泌が正常化していれば、妊娠には差し支えありません。女性がバセドウ症になると、妊娠初期に流産しやすくなる可能性が高まりますが、妊娠中に発症するのは、極めて珍しいケースだとのことです。

仁科先生は、「診断・治療の経過を見て、甲状腺ホルモンの状態が安定したのを確認して、計画的に妊娠することが望ましいでしょう」と助言します。チアマゾールを使用していた人が、妊娠を希望する場合は、もう1つのプロピルチオウラシルに切り換えて、効果が得られるかどうかを確認する必要があります。また繰り返しになりますが、アイソトープ治療を受けても、妊娠に問題はありません。

ヨウ素の摂取を制限しなくてもよい

甲状腺ホルモンの原料になるヨウ素は、人体に必須のミネラルです。最も多く含まれている食品は昆布ですが、ワカメやひじきなどの海藻類にも含まれています。

日本食は、伝統的に昆布でだしを取ったり、旨味調味料の中にもヨウ素が入っていますから、我々の食事には多かれ少なかれヨウ素が含まれています。このため、かつてはバセドウ病になると、ヨウ素を含む食品を制限していましたが、今は積極的に制限するメリットはあまりないと考えられており、治療中も特に制限することはありません。

ただし、シンチグラフィやアイソトープ治療など、放射性ヨウ素の検査・治療を受ける場合には、食品中のヨウ素の影響を排除するため、2週間ほどヨウ素を多く含む食品の摂取を制限してもらいます。

バセドウ病の再発、合併症について

ホルモンが過剰な状態になることを再発と呼ぶのであれば、バセドウ病は、再発が多い病気です。

治療方法でいうと、手術やアイソトープ治療は薬物療法に比べて、再発しにくい治療と言えます。甲状腺を大幅に切り取ったり放射性ヨウ素で破壊したりすれば、また甲状腺ホルモンが作られだしても、正常範囲を維持できるからです。

次の選択として、アイソトープ治療

「薬物療法により2~3年で約半分が薬をやめられるとお話ししましたが、残りの半分はやめられないということになります。その時点でアイソトープ治療を検討してみるのが、一般的な治療の流れです」(仁科先生)

ごくまれだが生命に関わる合併症など

バセドウ病は、基本的には命に関わるような病気ではありませんが、合併する症状によっては、深刻な状態になることがあり得ます。

まず、頻脈を放置しておくと、心臓が過剰な働きを強いられて疲弊するので、心不全につながることがあります。特に高齢者は加齢の影響も加わるので、治療の初期に、脈を穏やかにする目的で、高血圧治療薬であるβ遮断薬を抗甲状腺薬に併用することがあります。

もう一つ、甲状腺クリーゼという深刻な状態もあります。これは、生命が危険となるような激しい症状を示す甲状腺中毒症で、ひとたび発症すると、高熱、激しい頻脈、意識障害などが起こってきます。緊急に治療しなければ致命的な状態ですが、最近は適切な治療を受ける人が増えたために、極めてまれにしか起こりません。

橋本病について

甲状腺ホルモンの分泌が過剰なバセドウ病に対して、分泌が少なすぎる「橋本病」という病気があります。

甲状腺の機能が低下する病気

橋本病もまた自己免疫疾患の一種で、バセドウ病とは別の自己抗体によって、甲状腺組織に慢性的な炎症が起こってきます。この状態が長く続くと、甲状腺機能低下症を起こすことがありますが、一方で、橋本病であっても、甲状腺機能は正常だという人もいます。

甲状腺機能低下症になると、バセドウ病とは逆に新陳代謝が悪くなるのですが、疲れやすくなるなど、自覚症状では共通していることが多くあります。橋本病は、圧倒的に女性が多く、40~60歳代が中心です。身内に発症した人がいることもリスクになります。バセドウ病が自己免疫疾患で比較的多い病気であることは前述しましたが、橋本病はさらに頻度の高い自己免疫疾患です。

検査は血液検査が中心で、補助的にエコー検査も行います。長期間経過して甲状腺機能が一定のレベルを下回ってきたら、無症状でも、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。長期的に見ると徐々に進行していく病気ですが、服薬を続けることで、身体の機能を全く問題ない状態に維持できます。甲状腺ホルモン剤は極めて副作用が少ない薬です。

甲状腺のがんについて

バセドウ病の人に、甲状腺がんが発見されることもあります。ただし、全く別の病気として併存していたもので、バセドウ病になるとがんにもなりやすいといったことはありません。橋本病では、血液性のがんの1つである悪性リンパ腫の併発が多いことが知られています。

甲状腺のがんは穏やかなタイプが多い

甲状腺のがんになっても、甲状腺ホルモンや甲状腺の機能には影響が出ないので、甲状腺の腫れやしこりで気づくか、別の目的で取ったエコーやCTで偶然発見されることが多いようです。約9割は「乳頭がん」という、成長が緩やかな性質のがんのため、直系5mm以下の場合は、手術せず経過観察することが多くあります。一部に、「未分化がん」という進行が速く、悪性度が高いがんがあります。

かかりつけの医師、または内分泌の専門科を受診

甲状腺は、人体にとって不可欠な臓器の1つです。「気になる症状があったら、かかりつけの先生に相談するか、内分泌の専門科を受診して、適切な治療につなげてください」と、仁科先生は助言します。

  • 1
  • 2
仁科 祐子先生の詳細プロフィール
NTT東日本関東病院 仁科 祐子

NTT東日本関東病院 糖尿病・内分泌内科 医長

取得専門医・認定医

  • 日本内科学会内科認定医・総合内科専門医
  • 日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)専門医
  • 日本糖尿病学会認定専門医
  • 日本甲状腺学会専門医

医学セミナーのご案内

NTT東日本関東病院 人間ドックキャンペーン

セルフメディケーション税制とは


ここからフッター情報です

iタウンページ&タウンページコンテンツ
iタウンページコンテンツ

ページはここまでです

ページの先頭へ戻ります