病気事典[家庭の医学]
びょういんにはそれぞれのきのうがある
病院にはそれぞれの機能がある
病院にはそれぞれの機能があるについて解説します。
執筆者:
医療ジャーナリスト
和田 努
解説
「大病院信仰」は多くの人がもっています。とりわけ大都市に住んでいる人は、どこによい医師がいるか情報がないので、とりあえず大病院、大学病院に行けば無難だろうということで、大勢が押しかけます。また大病院や大学病院には、教授とか部長とか偉い先生がいるから、よい医療が受けられるに違いないと思いがちです。
大学病院を例にとると、内科や外科などは100人単位の医師がいます。そのなかには、医師免許取立ての研修医という見習中の医師も多く含まれています。時には教育途上にある医学生に、自らの体をゆだねるということもありえるのです。大学病院にいきなり受診しても、誰もが必ず教授に直接診てもらえるわけではありません。大学病院は医師を育てる教育機関でもあるのです。未熟な研修医による医療事故も多発していることも考えなくてはなりません。
少なくともかぜや腹痛程度の軽い病気でいきなり大学病院に飛び込むのは、賢明な選択とはいえません。
まずは「かかりつけ医」に
やはりいちばんいいのは、いきなり大病院を訪れることをやめて、自分の住んでいる地域や職場の近くに、かかりつけの医師を持つことです。
かかりつけ医はどんな医師がふさわしいのか考えてみましょう。医療はコミュニケーション行為です。平たく言えば、医療には人と人の「対話」「付き合い」が大切です。医師と患者ということに限定しないで日常の「付き合い」ということを考えてみましょう。悩みや困難に直面している時、相談に乗ってもらえる人、お互いに話をしていて気持ちが通じ合う人、そんな感じの人が、長く付き合っていける条件のような気がします。
相手がいばり、上からものを言う人で、こちらがへりくだって卑屈になっていなくてはならない関係は決してよい「付き合い」とはいえないでしょう。これは医師と患者の関係でも、同じことがいえるのではないかと思います。
何でも相談できて、患者の質問や悩みにじっくりと耳を傾けてくれて、わかりやすい言葉で的確に話してくれる医師は、有能な医師だと思います。X線写真やカルテの内容など、医療情報を開示してくれる医師は、有能であり、かつ自信を持って診療している証拠だと考えます。
心身の異常、不調を感じたら、まずかかりつけ医を訪れて相談することです。かかりつけ医に相談して、多くの場合は解決するでしょう。しかし、手術が必要になった時、高度な検査が必要になった時、適切な病院、専門医をかかりつけ医に紹介してもらうのが、好ましい「医師のかかり方」といえるでしょう。
かかりつけ医は万能選手ではありません。病気をふるい分けるスクリーニングの機能も担っているのです。
いずれにしても、極端な大病院志向は、患者にとっても医師にとっても得策ではありません。とりわけ現代は「生活習慣病の時代」です。信頼できるかかりつけ医をもち、長い期間の医療情報を共有しながら、二人三脚で健康管理をしていくのが理想的です。
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