病気事典[家庭の医学]
ちゅうかんせつだっきゅう
肘関節脱臼
肘関節脱臼について解説します。
執筆者:
国立成育医療センター第2専門診療部部長
高山真一郎
どんな外傷か
肘関節は、上腕骨(じょうわんこつ)と2本の前腕骨(ぜんわんこつ)(橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ))とで形成される関節で、上腕骨内側の滑車(かっしゃ)という部分と、尺骨の肘頭とカギ型の部分とが強くからみ合って、曲げ伸ばしの運動が行われています(図52)。
この部分がはずれることを肘関節脱臼と呼び、ほとんどの場合、尺骨が上腕骨に対して後ろ側に脱臼して(後方脱臼)、肘関節の屈伸ができなくなります。外側の橈骨頭だけがはずれる場合は、単に橈骨頭脱臼と呼ばれます。
脱臼と骨折の判別は、X線検査をしないとはっきりしないこともあります。
原因は何か
転倒した時に手をついて起こることがほとんどです。肘関節が脱臼するのは、主に思春期から成人で、乳幼児や高齢者では同じような外力がはたらくと骨折が生じ、骨折を伴わない脱臼になることはまれです。
治療の方法
まず、徒手整復を試みます。肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引すると、通常は簡単に整復されます。整復されない時は、受傷現場での無理な整復操作を繰り返して行うべきではありません。
整復困難な場合は、関節内に骨片がはさまっていることもあるので、X線検査での確認が必要です。また、整復後、肘関節の安定性をチェックし、安定している場合は1週間程度のギプス固定後に自動運動が許可されます。
整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯(じんたい)損傷が疑われます。このような場合、少し長めに2~3週間程度のギプス固定を行うことで回復することもありますが、手術で靭帯の縫合が必要なこともあります。
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