病気事典[家庭の医学]

きょうぎのがいしょう(けが)のしゅるい

狭義の外傷(けが)の種類

狭義の外傷(けが)の種類について解説します。

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解説(概論)

(1)鋭的(えいてき)外傷と鈍的(どんてき)外傷

狭義の外傷(以下、単に「外傷」という)は、その原因となる機械的外力の性質から、鋭的外傷と鈍的外傷に分けられます。

鋭的外傷とは、鋭利な刃物(ナイフ、剃刀(かみそり)、包丁、刀剣など)や、ガラス・陶磁器片、金属片、釘、針などによる損傷です。皮膚表面には創があり、出血がみられます。鋭的外傷の多くは、「切創(せっそう)(切りきず)」といわれるものです。刺された場合は「刺創(しそう)(刺しきず)」といわれます。深部の筋肉や体腔内の臓器に損傷が及び、血管や肺、胃腸、肝臓などの刺創など重傷の外傷になることもあります。

鈍的外傷とは、打撲(だぼく)、転倒、衝突、墜落などで、鈍的外力によって起こるものです。転倒や交通事故、スポーツなどで起こりやすい外傷です。鈍的外傷には、打撲といわれる「挫傷(ざしょう)」のほか、創ができる「挫創(ざそう)」「割創(かっそう)」「裂創(れっそう)」、骨や関節の損傷である「捻挫(ねんざ)」「骨折」などがあります。深部の筋肉や体腔内の臓器に鈍的損傷が及んで、脳挫傷や、肝臓、脾臓(ひぞう)、腎臓などの破裂が起こることもあります。

(2)創と傷

けがで起こる「きず」は、一般には「傷」と書きますが、医学用語としては「創(そう)」と「傷(しょう)」を区別して使います。

創は、皮膚や粘膜の表面が切り開かれたり、はがれていて、断裂がある状態です。ナイフで直線状に切った「切創」や、鈍的外傷で皮膚が複雑に損傷された「挫創」などがその典型例です。

一方、傷とは皮膚や粘膜の断裂はない状態です。鈍的外傷の「打撲傷(挫傷)」がその典型例です。時に混乱するのは、「すりむき傷」の場合です。実際には皮膚の断裂があるので「 擦過創(さっかそう)」とすべきですが、医療現場でも「擦過傷(さっかしょう)」ということがあります。

(3)開放性損傷と非開放性損傷

開放性損傷とは、皮膚や粘膜の断裂、すなわち「創」を伴う外傷です。非開放性損傷とは、皮膚や粘膜の断裂はありませんが、皮膚や深部組織・臓器の損傷があるものです。開放性損傷と非開放性損傷とを区別する理由は、開放性損傷では皮膚や粘膜の開放部位から病原菌が侵入し、感染の危険があるからです。

出血については、開放性損傷では多かれ少なかれ、創部からの出血があります。これを「外出血(がいしゅっけつ)」といいます。外出血は誰でも簡単にわかり、出血量もある程度把握できます。開放性外傷で刺創などでは、外出血は少なくても内臓の損傷による内出血があることもあるので、注意が必要です。

非開放性損傷では外出血はありませんが、内臓破裂などの臓器損傷があると、頭蓋内、胸腔(きょうくう)内、腹腔(ふくくう)内、筋肉内などに「内出血(ないしゅっけつ)」があることがあり、これを見逃すと重症になることがあります。

(4)清潔創と汚染創

開放性損傷では、創の汚染が治療上の問題になります。手術などでは、切開部を消毒して滅菌のメスで切開するために創は完全な無菌状態ですが、日常起こる創は多かれ少なかれ病原菌に汚染されています。

炊事中にコップの破片で切った切創などは比較的清潔であるのに対し、田畑での挫創や、古釘(ふるくぎ)を踏み抜いた刺創などは、創内に多量の病原菌とともに土砂などの異物が混入する汚染創です。

いずれの創も、消毒薬などを塗る前に、ただちに流水で十分に洗う必要があります。とくに汚染創では、大量の水道水で創内の異物を洗い出す応急処置が重要です。

組織が挫滅した創や深い刺創は、自分で処置をすることは無理なので、水で洗ったあと必ず医師の診療を受けましょう。軟膏などで創をふさぐとかえって危険なことがあります。

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