病気事典[家庭の医学]

いでんしいじょうはすべてびょうきか

遺伝子異常はすべて病気?

遺伝子異常はすべて病気?について解説します。

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遺伝子異常はすべて病気?の解説(コラム)

 赤血球が溶血(ようけつ)する鎌状(かまじょう)赤血球症はヨーロッパでは貧血の原因として重視されていますが、保因者の人は高所に登って酸素分圧が低くならないかぎり溶血は起こりません。むしろマラリアに感染しないという特徴をもっているという利点があるため、マラリア感染地区では普通の人より有利なのです。

 中央アフリカではマラリアは人間の命を脅かす感染症ですが、アフリカの住民は人類の長い歴史のなかで鎌状赤血球症の遺伝子異常の人が生き残るという形で環境に適応してきたと考えられます。

 マルファン症候群は心臓疾患・水晶体の異常・長い躯幹と手足をもつ、よく知られた常染色体優性遺伝病ですが、米国の3代大統領のリンカーンも、実はマルファン類似の遺伝病をもっていました。天才的なバイオリンの名手だったパガニーニは、皮膚や靭帯(じんたい)が伸びすぎるエーラス・ダンロス症候群だったため、超人的な指使いができたといわれています。

 単一遺伝子異常といっても障害の発現には個人差があります。遺伝子異常が原因する“障害の程度”が“病気”かどうかを決めるわけで、遺伝子異常そのものが“病気”ではないのです。本文で述べたように誰でも10個くらいの常染色体劣性遺伝病の遺伝子をもっています。特定の条件により病気の子どもを生むかどうかが決まるわけで、遺伝子異常をもっていない人はいません。

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