病気事典[家庭の医学]

すいぎんちゅうどく

水銀中毒

水銀中毒について解説します。

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どんな中毒か

水銀汚染の原因には、人為的なものと自然発生的なものがあります。無機水銀とメチル水銀(有機水銀)では症状が異なるので、分けて考えます。過去に、メチル水銀による水俣病(みなまたびょう)や第二水俣病が発生しています。

症状の現れ方

メチル水銀は血液脳関門(けつえきのうかんもん)(血液と脳の間にある関所)を通過し、中枢神経系に影響を与えます。中毒の初期症状は、四肢末端や口唇周辺のしびれ感で始まり、進行すると手指のふるえ、歩行障害、求心性視野狭窄(きょうさく)などが現れます。

一方、無機水銀は腎尿細管の壊死(えし)を引き起こします。急性中毒では、胃や腹部の激しい疼痛、嘔吐、血性の下痢などの消化器系症状が現れ、重い場合には腎障害に進みます。

検査と診断

無機水銀やメチル水銀による中毒の可能性があれば、血液、毛髪、尿中の水銀やメチル水銀濃度を分析します。

治療の方法

急性中毒では、キレート剤や樹脂を用いて排泄を促します。メチル水銀の慢性中毒で中枢神経系に障害が出てしまうと、治療は困難です。まずはメチル水銀含有食品の摂取を中止します。

食品の規格基準

食品経由の水銀摂取の8割は魚介類からです。魚介類に対する水銀の暫定的規制値は、総水銀0・4ppm、メチル水銀0・3ppm(水銀として)です。ただし、マグロ類、内水面水域の河川産の魚介類(湖沼産は含まず)、深海性魚介類などは対象外です。

そこで、厚生労働省は魚介類中のメチル水銀を考慮し、妊婦の場合1回約80g食べるとして、メカジキ、キンメダイ、クロマグロなどは週1回まで、キダイ、マカジキなどは週2回までに制限するよう注意を促しています。

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