病気事典[家庭の医学]

しょくちゅうどくとは

食中毒とは

食中毒とはについて解説します。

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解説(概論)

食品などに含まれた微生物、化学物質、自然毒などを摂取することによって起こる衛生および健康上の危害で、その原因の調査や防止措置をとるべきもの全般を指して、食中毒と呼んでいます。

病因物質について

病因となる物質としては、主に微生物などや、化学物質、自然毒があります。

(1)微生物など

細菌、ウイルス、原虫(げんちゅう)類、寄生虫があります。細菌の主なものには、サルモネラ、腸炎ビブリオ、下痢原性大腸菌(O(オー)157などの腸管出血性大腸菌も含まれる)、黄色(おうしょく)ブドウ球菌(きゅうきん)、カンピロバクター、ボツリヌス菌、赤痢菌(せきりきん)、コレラ菌、チフス菌、リステリアなどがあります。

 ウイルスの主なものには、ノロウイルス、ロタウイルスがあり、原虫類の主なものには、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、ジアルジア、赤痢アメーバなどが、寄生虫の主なものには、アニサキス、旋尾線虫(せんびせんちゅう)、顎口虫(がくこうちゅう)、旋毛虫(せんもうちゅう)などがあります。

(2)化学物質

食品添加物、有害性金属(カドミウム、鉛、スズ、有機水銀など)、そのほかに油脂の変質があります。

(3)自然毒

植物性の自然毒として、カビ毒、毒キノコ、植物毒(トリカブトアルカロイド、バレイショ毒、青酸配糖体(せいさんはいとうたい)など)、動物性の自然毒として、フグ毒、麻痺性貝毒(まひせいかいどく)、シガテラ魚毒(ぎょどく)があります。

疫学的な動向

2007年に日本で食中毒として届けられた総件数(医師が患者を診て食中毒と判定した場合に届け出る制度になっている)は1080件です(食中毒統計より)。そのうち、細菌性は732件、ウイルス性は348件です。患者総数は3万1714人で、細菌性は1万2964人、ウイルス性は1万8750人です。

原因病原体として多いものは以下のようになっています(事件数の多い順に示します。カッコ内の数字は年間の事件数と患者数)。カンピロバクター・ジェジュニ/コリ(416件、2396人)、ノロウイルス(344件、1万8520人)、サルモネラ属菌(126件、3603人)、黄色ブドウ球菌(70件、1181人)、腸炎ビブリオ(42件、1278人)、ウエルシュ菌(27件、124人)、腸管出血性大腸菌(25件、928人)、その他の下痢原性大腸菌(11件、648人)、セレウス菌(8件、124人)。

1998年の事件総数(2743件:細菌性は2620件、ウイルス性は123件)や患者総数(4万1550人:細菌性は3万6337人、ウイルス性は5213人)と比べると近年は明らかに減少してきています。しかし、ウイルス性、とくにノロウイルスによる事件および患者数は増加しています。

細菌性のなかでは、腸炎ビブリオおよびサルモネラ属菌による食中毒の減少傾向が顕著です。これに対し、カンピロバクター・ジェジュニ/コリによる食中毒事件数は1997年以降1人事例の届出増加のため大きく増えてきています。

腸管出血性大腸菌に関しては、感染症法に基づく感染者数が食中毒患者数を大きく上回っています。その原因としては、原因食品の特定が困難な事例が多く、とくに患者1人の場合、食中毒としての届出がされず、感染症として感染症法による届け出がされているためと考えられています。

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