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気候変動と感染症 病気事典[家庭の医学] - メディカルiタウン


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病気事典[家庭の医学]

きこうへんどうとかんせんしょう

気候変動と感染症

気候変動と感染症について解説します。

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気候変動と感染症の解説(コラム)

 地球規模での温暖化に伴って感染症を媒介する昆虫類がどのような影響を受けるかは重要な問題です。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が最近発表した第4次評価報告書において、健康に関係して種々の影響が現れることが予測されています。

 とくに、媒介動物(蚊、ダニ類)に関して、より高緯度の地域や、より海抜の高い高地への分布域の拡大などが指摘されています。ある種の感染症の流行が温暖化と密接に関係して起こるという証明は、困難な場合が多いのですが、マラリアを含め、いくつかの例を提示して、気候変動と感染症の問題を概説します。

●ウエストナイル熱

 1999年に突然ニューヨークで流行したウエストナイル熱は、その後、米国内で患者数が急速に増加し、患者発生地域はハワイとアラスカ州を除く地域に拡大しました。西半球で初めて起こった流行で、今後どのように米国に定着するのか種々の議論が交されました。トビイロイエカの体内でウイルスが越冬することが明らかとなり、冬期の平均気温の上昇が翌年の流行に影響を与えている可能性も指摘されています。

 また、このウイルスは、夏期の高温条件下で蚊体内での増殖率が高まることが知られていて、1999年のニューヨーク州、多数の患者が発生した2003年のコロラド州では、夏期の平均気温が高かったことが流行につながったといわれています。

●マラリア

 マラリアは、アフリカのサハラ砂漠以南で大きな流行がいまだ続いており、中国、東南アジアなどの山間部、中南米でも依然として猛威をふるっています。現在の流行地のほとんどは熱帯、亜熱帯地域に属し、一般にマラリアは熱帯の病気と考えられています。

 しかし、中世ヨーロッパにおけるマラリア、とくに三日熱マラリアの流行は、スカンジナビア半島全体が流行地でした。また、日本におけるマラリア流行の歴史においても、明治、大正、昭和初期には全国的に三日熱マラリアが流行していました。

 最近、地球規模での温暖化に伴って、マラリアが日本でも再び流行する可能性があるとの議論がまことしやかに論じられていますが、温帯地域における三日熱マラリアに関していえば、この予想はまったく的を射ていません。三日熱マラリアの日本での主な媒介蚊はオオツルハマダラカであり、明治時代に北海道に入植していた屯田兵やその家族の間で流行したマラリアは、このハマダラカが媒介したと考えられています。

 マラリアの流行には、媒介蚊の発生数、病原体保有者としてのマラリア患者、蚊の体内でのマラリア原虫の増殖効率、媒介蚊のヒト吸血嗜好性、一晩あたりの吸血蚊数など、複雑な要因が関係しています。

 第二次世界大戦がまさに終結する直前、八重山諸島で熱帯熱マラリアの大きな流行が起こり、罹患者数1万6000名以上、死亡者は3600人以上を数えました。これは、マラリアに対する自然免疫をもたない住民が山間部のマラリア有病地へ疎開させられたために起きた悲劇です。その疎開先での生活は、粗末な掘っ立て小屋、近くの渓流で発生するコガタハマダラカに毎晩刺される環境、キニーネなどの治療薬もなく、食糧も尽きた最悪の状況でした。

 こうした事例から、マラリアが流行する環境は、気候変動による温暖化などの単純な要因だけでは説明ができないことが理解いただけるでしょう。

 一方、地球規模での温暖化によって、アフリカ大陸での高地マラリアの症例が今後増加するとの予測があります。現在、ケニヤの高地では、海抜1500m以上の地域にも熱帯熱マラリア患者が発生しています。

 通常、高地と低地との行き来が頻繁に行われている場合、低地で感染して高地で発症する可能性が否定できず解析が困難な場合が多いのですが、高地のみに生活する小児の患者が発生している場合には、居住地周辺で感染した可能性が高くなります。

 実際、ケニア山の高地で媒介蚊であるAnopheles arabiensisの調査が行われ、海抜1500〜1900mの地帯に同蚊の分布が確認されています。今後の温暖化傾向によっては、アフリカ諸国の高地において、ハマダラカ(図7)の発生密度が上昇することによってマラリア流行につながるとの意見もあります。

●デング熱

 デング熱の主要な媒介蚊であるネッタイシマカは、1月の平均気温が10℃以上の地域に分布するといわれています。台湾南部の高雄や台南では同蚊によるデング熱の流行がみられますが、台北ではほとんど流行が起こっていません。今後の温暖化傾向によっては、南西諸島でネッタイシマカが関わるデング熱の流行が起こる可能性は否定できません。

 IPCCの最近の報告で、最悪の予測として、2100年までに北半球を中心に年平均気温が5℃以上上昇する可能性が指摘されています。日本のヒトスジシマカ(図8)の分布北限は1950年代には栃木県でしたが、その後、約50年間に福島県、宮城県、山形県、秋田県、岩手県と拡大を続け、年平均気温が11℃以上の地域に同蚊の分布が確認されました。

 最近、私たちは、温暖化予測モデルであるMIROC K1モデルをもとに、2035年および2100年における東北地方の年平均気温の1kmメッシュ気候図を作成し、温度分布予測を行いました。その結果、2035年には、青森を含めた東北地方全域にヒトスジシマカの分布が広がり、2100年には北海道の南部から中央部の札幌にかけて分布域を広げる可能性が示されました。

 これは、デング熱や現在インドや東南アジアで大きな流行が起こっているチクングニヤ熱のリスク地域が拡大することを示しています。

 2007年に、北イタリアの小さな村で突然チクングニヤ熱の流行が起こり、その媒介蚊は1990年にローマで初めて確認されたヒトスジシマカでした。ヨーロッパCDC(疾病予防管理センター)は、今後ヒトスジシマカがヨーロッパ諸国にどの程度分布域を拡大するか注視しており、私たちが東北地方で行った解析結果と同様の予測を行っています。これらは、温暖化によって媒介蚊の分布域が拡大し、蚊媒介性感染症の流行リスクが高まった貴重な例といえます。

 マラリアの部分で触れたように、そのほか、物流の活発化や感染者の飛行機による短時間の移動も重要な要因であることを理解しておいてください。

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