病気事典[家庭の医学]
にゅーもしすちす・かりにはいえん
ニューモシスチス・カリニ肺炎
ニューモシスチス・カリニ肺炎について解説します。
執筆者:
国立感染症研究所寄生動物部部長
野崎智義
どんな感染症か
ニューモシスチス・カリニと呼ばれる微生物の感染によって起こる肺炎です。ニューモシスチス・カリニの生物学的分類ははっきりせず、真菌(しんきん)(カビ)に近いとする説と原虫に近いという説があります。この微生物はヒトを含めたさまざまな動物に通常感染していますが、免疫力が正常な個体ではその増殖を阻止できるので、病気を起こすことはありません。ところが、エイズなどの免疫不全状態に陥るとニューモシスチス・カリニの増殖を止められなくなり、病気が起こります。
症状の現れ方
通常、エイズ患者や免疫抑制薬を投与した臓器移植患者、抗がん薬や放射線治療を行った白血病・悪性腫瘍患者に併発します。発熱、乾いた咳(せき)、息苦しさに始まり、呼吸困難、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青くなる)へと至ります。同時に動脈血酸素分圧が大きく低下します。胸部X線写真では両側の肺全体に霞(かすみ)がかかったように、すりガラス様の陰影を生じます。適切な治療を行わないと確実に死に至ります。
検査と診断
免疫不全状態の患者さんでは間接蛍光(けいこう)抗体法などで血清抗体を検出することが難しい場合が多いので、喀痰(かくたん)、吸引物、あるいは肺生検組織からニューモシスチス・カリニを染色して顕微鏡検査で見つけることで診断されます。また、特定の研究機関では抗原の検出、PCR法によるDNAの検出も可能です。
治療の方法
治療にはトリメトプリム・サルファ剤合剤、ピリメタミン・サルファ剤合剤、あるいはペンタミジンが用いられます。エイズの患者さんでは本症の併発が死因の大きな比率を占めています。
エイズ、悪性腫瘍など本肺炎を起こす危険のある患者さんには、予防的な投薬を行うこともあります。
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