病気事典[家庭の医学]
さいとめがろういるすかんせんしょう
サイトメガロウイルス感染症
サイトメガロウイルス感染症について解説します。
執筆者:
国際医療福祉大学病院小児科・大学院医療福祉学研究科国際感染症学領域教授
沼﨑 啓
どんな感染症か
日本人の大多数は、周産期(しゅうさんき)を中心とする母子間でサイトメガロウイルス(CMV)に初めて感染し、潜伏した状態で体内にウイルスを保有します。
CMV感染は直接的、間接的なヒトとヒトの接触によって起こります。感染源になりうるものとしては尿、唾液、鼻汁(びじゅう)、子宮頸管(けいかん)粘液、腟分泌液、精液、母乳、涙、血液、移植臓器などが知られており、一見健康にみえる人からもウイルスの排出が起こることもあります。
症状の現れ方
小児や成人が初めてCMVに感染し、症状が現れる場合では、発熱、肝臓やリンパ節のはれというような軽い症状がほとんどです。妊娠中にCMVに初めて感染した場合は、先天(胎内)感染と呼ばれ、胎児に重い後遺症を残すこともあります。多くは無症状ですが、重症の場合には肝臓のはれ、黄疸(おうだん)、出血などの症状に加え、小頭症(しょうとうしょう)や水頭症(すいとうしょう)といった神経の異常も加わり、胎児や新生児が死亡することもあります。5歳ころまでに難聴(なんちょう)や知能の障害、眼の異常などの症状が出てくる場合もあります。
何らかの原因で免疫力が低下し易(い)感染状態になると、潜伏感染していたCMVが再活性化して、ほとんどの人に症状が現れます。発熱、白血球減少、血小板減少、肝炎、関節炎、大腸炎、網膜炎(もうまくえん)、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)などの症状が現れると重症になります。
検査と診断
診断は、血清抗体の測定や血液・尿などの臨床材料からウイルスを検出することが一般的です。妊娠中に超音波検査などで胎児に異常が見つかった場合は、羊水(ようすい)のウイルス検査を行うこともあります。CMVの遺伝子は健常人の組織中にもあり、無症状でウイルスを排出することもあります。活動性のCMV感染では実験室での診断だけではなく、臨床診断も併用する必要性が指摘されています。
治療の方法
治療薬としてはガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル、アシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス薬、抗CMV高力価(こうりきか)免疫グロブリン、ヒト型抗CMV単クローン抗体などが知られています。
病気に気づいたらどうする
免疫状態や抵抗力が低下している場合は治療が必要です。それ以外の場合は無症状か軽症のことが多く、治療が不必要なこともあります。
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