病気事典[家庭の医学]

ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきんかんせんしょう

腸管出血性大腸菌感染症

腸管出血性大腸菌感染症について解説します。

執筆者:

どんな感染症か

O(オー)157をはじめとした腸管出血性大腸菌はヒトに下痢を起こす大腸菌のひとつで、ベロ毒素を産生します。この菌はウシの大腸に住んでいて、その腸内容物に汚染された食べ物(生または加熱不十分な牛肉、内臓、サラダなど)や水、手指を介して口から感染します。日本では1996年に学校給食が原因となり大規模な食中毒が発生しました。国内で監視が必要な3類感染症に指定され、年間3000~4000例の届け出があり、集団発生は保育園や高齢者介護施設などで続いています。

少ない菌量で感染するため、ヒトからヒトへ接触感染します。小児や高齢者では腸炎のほかに溶血性尿毒症症候群(ようけつせいにょうどくしょうしょうこうぐん)や脳症を合併し、最悪の場合死に至ることがある点から、腸炎のなかでは最も注意を要する疾患のひとつです。

症状の現れ方

典型的な場合、平均3~4日の潜伏期間の後、水様性下痢と激しい腹痛で発症し、1~2日後には便成分をほとんど含まない血性下痢が出現します。38℃以上の高熱はあまり出ません。順調であれば7~10日で治癒しますが、下痢発症後1週間前後に溶血性尿毒症症候群や脳症などの重い合併症を起こすことがあります。

尿毒症の発生率は小児と高齢者で高く、5~10%とされていて、2006~2007年の報告例では、10歳未満で7・2%、全体で4・1%でした。毎年死者が出ています。

検査と診断

便から大腸菌を検出し、ベロ毒素をもっていることが確認された段階で診断されます。診断が確定したら医師は保健所に届け出ます。最終確認までに数日かかりますので、症状から腸管出血性大腸菌感染症が疑われる場合は、便から直接ベロ毒素やO157を検出する迅速診断キットを用いて検査を行います。溶血性尿毒症症候群や脳症は症状と血液や尿の検査などで診断されます。

治療の方法

基本は腸炎に対する対症療法です。腸の蠕動(ぜんどう)運動を抑える下痢止めは推奨されていません。抗菌薬の使用について、海外では使うべきでないとされていますが、日本では、発病3日以内であれば、特定の抗菌薬の使用が推奨されています。

予防のために

小児や高齢者は生や加熱不十分な牛肉や内臓を避けること、手洗いを励行することです。

情報提供元 : (C)株式会社 法研 執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。