病気事典[家庭の医学]
しんきんせいずいまくえん
真菌性髄膜炎<感染症>
真菌性髄膜炎<感染症>について解説します。
執筆者:
国立感染症研究所生物活性物質部客員研究員
新見昌一
どんな感染症か
主に、クリプトコックス・ネオフォルマンスという真菌が感染して起こります。この菌は、土壌や鳥類の排泄物のなかに棲息(せいそく)しています。
ちりやほこりとともに空気中に浮遊した菌を吸い込むと、ヒトの肺に感染することがあります。健康な人は、肺に感染しても無症状のままで発症することはありません(不顕性(ふけんせい)感染)が、生体の感染防御能に障害のある人は、肺から血液を通して髄膜に侵入し、クリプトコックス髄膜炎を発症しやすくなります。
このような感染の様式を日和見(ひよりみ)真菌感染と呼びます。エイズに感染した人をはじめ、ステロイド療法や臓器移植を受けた人、あるいは白血病、サルコイドーシス、悪性腫瘍など基礎疾患をもっている人はリスクの高いグループに入ります。
そのほかの真菌による髄膜炎はまれですが、コクシジオイデスという真菌が原因で起こることもあります。この菌による感染は、北米アリゾナの砂漠地帯など特定の地域に限られますが、健康な人でも肺に感染し、髄膜炎を発症する可能性があり、実際に渡航者が発症したというケースもあります。
症状の現れ方
真菌性髄膜炎になると、細菌やウイルスによる髄膜炎と同様に頭痛、吐き気・嘔吐、項部(こうぶ)(うなじ)硬直などの髄膜刺激症状と発熱、全身倦怠感(けんたいかん)などの症状が現れます。抗細菌薬を使用しても熱が下がらず、症状が続く場合に真菌性髄膜炎が疑われます。
真菌が肺にも合併して感染している場合には、咳(せき)、喀痰(かくたん)、呼吸困難などの呼吸器症状を伴うことがあります。その他、胸部X線の画像診断で、胸膜直下の結節影もしくは、空洞を伴う陰影所見によって見いだされる例があります。
治療の方法
抗真菌薬のアムホテリシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールが用いられます。アムホテリシンBの単独投与またはフルシトシンとの併用、あるいはフルコナゾールの使用が一般的です。クリプトコックスが原因の髄膜炎には、ミカファンギンは有効ではありません。
病気に気づいたらどうする
特別な予防法はありませんが、特有の髄膜刺激症状に気がついたら、すみやかに専門医で精密検査をしてもらいましょう。前述したように、基礎疾患をもつリスクの高い人は、持続的に様子をみながら真菌症の早期診断に努めることが大切です。
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