病気事典[家庭の医学]

さじがたそうこう(すぷーんつめ)

匙型爪甲(スプーン爪)

匙型爪甲(スプーン爪)について解説します。

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どんな病気か

爪甲の先端に近い部分が陥凹(かんおう)するか、または、爪甲全体がスプーン状にへこむ状態を匙型爪甲(あるいはスプーン爪)といいます。

なお、本項では爪の解剖用語を用いるので、図104を参考にしてください。

原因は何か

種々の原因で軟らかく、また薄くなった爪甲に、機械的な外力が作用することにより生じます。それ以外にも、生理的、先天的な匙型爪甲、あるいは、皮膚ないし全身疾患に伴うものなどがあります。

(1)生理的

子ども、とくに生後1~2歳までの乳幼児の手足の爪にみられます。また、この状態がまれに思春期まで続くこともあります。

(2)先天性

匙型爪甲自体が遺伝的に生じる以外に、遺伝性の皮膚病(遺伝性掌蹠角皮症(しょうせきかくひしょう)など)に伴ってみられることもあります。

(3)外因性

シンナーなどの有機溶剤を扱う職人や、美容師、理容師などにみられることが多いようです。すなわち、指(趾)先に作用する外力は、骨のない部分では直接爪甲に作用するため、軽微ではあっても掌側から背側に向かう外力が続くと爪甲は扁平化し、さらに匙型ないしスプーン状になります。

(4)皮膚疾患

乾癬(かんせん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、円形脱毛症など。

(5)全身性疾患

血液疾患(鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)やオスラー病など)や内分泌・代謝疾患(末端肥大症(まったんひだいしょう)や神経性食思不振症(しょくしふしんしょう)など)などでみられますが、とくに貧血(鉄欠乏性貧血)に伴って生じることはよく知られています。

症状の現れ方

子どもにみられる生理的な匙型爪甲は手よりも足の爪に多くみられますが、外因性のものなどでは通常手の爪に生じます。また、職業性では利き手の1~3指(親指から中指)にみられるのが特徴です。

なお、匙型爪甲のほかに、口角びらん、赤い平らな舌および飲み込み(嚥下(えんげ))障害を伴うものをプランマー・ビンソン症候群と呼んでいます。

治療の方法

生理的匙型爪甲や職業などによる外因性のものが最も多く、その外力を除去または軽減するとすみやかに改善していきます。

また、貧血のはっきりしない患者さんでも、鉄剤投与によって症状が改善することがあります。

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