病気事典[家庭の医学]

ひふあくせいりんぱしゅ

皮膚悪性リンパ腫

皮膚悪性リンパ腫について解説します。

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どんな病気か

リンパ球はその顔つき(表面マーカー)により大きくTリンパ球とBリンパ球とに分類されます。また、皮膚はリンパ節以外でリンパ腫を生じる代表的な臓器のひとつであり、とくにT細胞リンパ腫が好発します。また、悪性リンパ腫白血病のなかにはしばしば皮膚病変を生じるものがあり、その皮疹(ひしん)の正確な評価は診断や病期分類に役立ちます。

皮膚に原発するT細胞リンパ腫の代表が菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)とセザリー症候群であり、皮膚T細胞リンパ腫と総称されます。また、菌状息肉症とセザリー症候群以外の皮膚悪性リンパ腫としては、成人T細胞白血病・リンパ腫をみることが多いのですが、その他のT細胞リンパ腫やB細胞リンパ腫、さらには、さまざまな顔つきをもった良性ないし悪性のリンパ腫も皮膚に生じます。

原因は何か

(1)菌状息肉症とセザリー症候群

Tリンパ球が悪性化して皮膚に浸潤(しんじゅん)したものであり、その顔つきはCD4陽性のヘルパー/インデューサーT細胞とされます。

また、大型で核が濃く染まる異型リンパ球(息肉症細胞ないしセザリー細胞と呼ぶ)の出現が特徴です。

(2)成人T細胞白血病・リンパ腫

レトロウイルスのHTLV‐1(ATLウイルス)が発症に関与している末梢T細胞腫瘍であり、患者さんによっては血液のなかに現れたり(白血病型)あるいは全身のリンパ節がはれたり(リンパ腫型)するなど、さまざまな症状を呈します。

症状の現れ方

(1)‐a 菌状息肉症

次の3期に分けられます。また、経過が長く、紅斑期(こうはんき)と扁平浸潤期(へんぺいしんじゅんき)が10~20年にわたって持続するのも特徴です。

紅斑期

体幹、四肢にさまざまな形と大きさの淡紅色から紅褐色のかゆみのない紅斑がたくさんみられ、紅斑の上には粉(鱗屑(りんせつ))を軽度にのせます。なお、局面状類乾癬(るいかんせん)という病気は、菌状息肉症の紅斑期そのものと考えられます。

扁平浸潤期

紅斑が次第にしっかりしてきて、硬く扁平(浸潤性)になるとともに周囲に拡大していきます。それにつれて、紅斑の中央はむしろ普通の皮膚のようになり、次第に環のような(環状)あるいは馬のひづめのような形(馬蹄形(ばていけい))になってきます。また、このころから全身のリンパ節のはれが目立ってきます。

腫瘍期

硬く扁平になった紅斑の上に大小さまざまな盛り上がりを生じるようになり、一部崩れて潰瘍になることもあります。

(1)‐b セザリー症候群

紅皮症(全身の皮膚が赤く潮紅して、粉(鱗屑)をふく皮膚の状態)、表在リンパ節腫脹(しゅちょう)および末梢血中へのセザリー細胞の出現を特徴とします。

(2)成人T細胞白血病・リンパ腫

すでに白血病やリンパ腫の状態になったあとに皮疹(ひしん)を生じる場合と、皮膚病変のみで検査しても白血病やリンパ腫の状態を検出できない場合に分かれます。

なお、後者の状態は臨床的にも病理組織学的にも菌状息肉症やセザリー症候群などの皮膚T細胞リンパ腫と酷似します。また、この病型は、以前はくすぶり型に含まれていましたが、皮疹を伴わないくすぶり型に比べると予後が悪いため、皮膚型という病型として扱われるようになりました。

検査と診断

臨床像から皮膚悪性リンパ腫が疑われる時は、皮膚生検、血液検査などを行います。また、さらに詳しい検査(組織の免疫染色検査、ATLA(HTLV‐1)抗体検査、フローサイトメトリーによる細胞の表面マーカー検索、サザンブロット法などによる遺伝子解析、さらには、骨髄穿刺(こつずいせんし)や全身検索など)を行うことで、病型および病期を診断します。

治療の方法

(1)‐a 菌状息肉症

紅斑期、扁平浸潤期ではステロイド薬の外用や紫外線治療などを行います。また、扁平浸潤期から腫瘍期にかけては放射線治療や多剤併用化学療法などが行われます。

(1)‐b セザリー症候群

菌状息肉症の治療に準じます。

(2)成人T細胞白血病・リンパ腫

放射線治療や多剤併用化学療法などを行います。

病気に気づいたらどうする

早期に診断を確定することが大切ですが、良性疾患とも皮膚悪性リンパ腫の初期とも診断のつきかねる患者さんが多いのも事実です。また、その後の経過をみることが診断にも治療にも大切なことから、医師と信頼関係をもったうえで根気よく治療を続けることが必要です。

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