病気事典[家庭の医学]

はくせん

白癬

白癬について解説します。

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どんな病気か

真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)(白癬菌(はくせんきん))が皮膚に感染して起こる病気です。病変の部位により、足白癬(あしはくせん)(水虫)、爪白癬(つめはくせん)(爪の水虫)、手白癬(てはくせん)(手の水虫)、体部白癬(たいぶはくせん)(ゼニたむし)、股部白癬(こぶはくせん)(いんきんたむし)、頭部白癬(とうぶはくせん)(しらくも)、ケルスス禿瘡(とくそう)などに分類されます。皮膚科では比較的多い病気で、外来の患者さんの10~15%を占めます。

原因は何か

原因あるいは誘因として各病型に共通していることは、感染の機会が多いこと、高温、多湿などの環境因子、不潔、多汗などの皮膚の問題、長靴・安全靴の着用などの生活習慣です。

症状の現れ方

白癬の臨床症状は病型で異なりますが、共通した特徴として、環状の紅斑(こうはん)を示し、中心部は軽快傾向にあるため褐色調で、辺縁は炎症が強く、小水疱(しょうすいほう)や丘疹(きゅうしん)が認められます。白癬はかゆいというイメージがありますが、かゆくないこともあり注意が必要です。

検査と診断

臨床症状だけでは白癬の診断はできません。区別が必要な皮膚病が多数あるので、顕微鏡を使った検査(直接鏡検)で特徴的な菌要素を検出することが診断の決め手になります。

最も一般的に行われる直接鏡検KOH法はピンセット、ハサミ、メスなどを使って、病変部の鱗屑(りんせつ)(皮膚表面からはがれかけている角質)、小水疱、丘疹、爪、毛などを採取し、スライドグラス上で、水酸化カリウム溶液を滴下して顕微鏡で観察します。白癬菌は少し褐色調で、分岐する傾向のある中隔をもつ菌糸、その菌糸がばらばらになった分節胞子(ほうし)、およびそれが連なった胞子連鎖としてみられます。

培養検査は、菌種の特定のために行います。日常の診療に使う主な培地は、サブローブドウ糖寒天培地です。また、病変部が汚染されている時は、これに抗菌薬を加えると汚染菌の発育が抑えられて白癬菌が生えやすくなります。白癬の主要原因菌は、トリコフィートン・ルブルム(紅色菌)とトリコフィートン・メンタグロフィーティス(毛瘡菌(もうそうきん))です。

治療の方法

白癬の治療の基本は、白癬菌に対して抗菌力のある抗真菌薬の外用療法です。角質増殖型足白癬爪白癬ケルスス禿瘡などの病型、あるいは広範囲、難治性、再発性の症例では内服薬も使われます。

外用療法の長所は、症状の消失や環境への菌の散布の抑制が早いこと、全身的な副作用がないことです。短所は、連日の塗布が必要で、面倒さや不快感、身体的ハンディキャップなどのため適切に行われないことがあること、あるいは行われても塗り残しなどがあることです。

これに対して、内服療法の長所は、広範囲に薬剤がいきわたり、病変全体に確実に効くこと、最終的な治療効果が高いこと、塗布より簡便なことです。短所は、症状が消えるまでに外用薬より時間がかかることと、全身的な副作用が現れることがあることです。

外用薬には多数の種類があり、イミダゾール系、アリルアミン系、ベンジルアミン系、チオカルバミン系、モルフォリン系などに分類されています。最近の薬剤は、共通して白癬菌に対する抗菌力が強くなるとともに、皮膚での貯留性、浸透性もよくなり、有効性が高まっています。また、用法は1日1回が基本で、入浴後か就寝前に塗るのが一般的です。

外用薬の剤形としては、クリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤があります。最も多く使用されるのはクリーム剤で、使用感もよく、安全性も比較的優れています。軟膏剤は安全性が高く、冬場に使用すると保湿効果もありますが、べとつくなど使用感の点で問題があります。液剤とゲル剤は使用感がよく、薬剤浸透性も優れますが、じくじくした浸軟部(しんなんぶ)やびらんした(ただれた)局面では刺激感を伴うことがあります。外用薬の副作用で多いのは一次刺激と接触アレルギーです。

白癬に対する内服薬としては、従来からあるグリセオフルビンに代わって、アリルアミン系のテルビナフィン(ラミシール)とトリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が使われています。

テルビナフィンは125㎎錠を1日1回内服します。副作用は比較的少ないのですが、定期的な血液検査が必要です。イトラコナゾールは、50㎎カプセルを1日1回1ないし2カプセル内服しますが、爪白癬では、パルス療法が用いられます。副作用は比較的少ないのですが、併用してはいけない、あるいは併用に注意を要する薬剤が多くあります。また定期的な血液検査も受けたほうがよいでしょう。

病気に気づいたらどうする

白癬では、治療を始めると症状が残っていても顕微鏡を使った検査で陰性化してしまうことがあります。そうなると正しい診断がつかないので、治療を行う前に皮膚科専門医を受診して検査を受けてください。

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