病気事典[家庭の医学]

いま、とくにきをつけるべきひふびょう

今、とくに気をつけるべき皮膚病

今、とくに気をつけるべき皮膚病について解説します。

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解説(概論)

(1)アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー性皮膚疾患は増加の一途をたどっています。喘息(ぜんそく)も花粉症(かふんしょう)もそうですが、慢性の病気では、つい「あっと驚くような治療」に飛びつきたくなります。そのため、アトピービジネスと呼ばれる民間療法の落とし穴にはまる患者さんがあとを絶ちません。

すでに厚生労働省や学会からは治療のガイドラインが出ていますから、標準的で理にかなった治療かどうかをよく判断し、根気よくコントロールを目指すことが結局治療の王道であることを銘記すべきです。ガイドラインはインターネットでも見ることができます(http://www.dermatol.or.jp/)。アトピー性皮膚炎に関しては、九州大学皮膚科のHPも役に立ちます(http://www.kyudai-derm.org/part/atopy/index.html)。

(2)紫外線は皮膚がんの元凶です。とくに、高齢社会を迎えて、皮膚がんが急増しています。この背景には戦後のライフスタイルの変化、とくにアウトドアレジャーなどの太陽崇拝志向が強く影響しています。50歳を過ぎて、顔などの日光露出部に盛り上がるできもの、治りにくい 潰瘍(かいよう)、かさついた紅斑(こうはん)などがあれば一度は受診してください。

また、手のひらや足の裏にあるほくろが大きくなり続ける時は要注意です。ほくろのがんも早期に発見すれば確実に治ります。

(3)紫外線はしみ、しわなどの皮膚の老化の原因でもあります。多くの方が美容的に気にされる皮膚の老化現象のほとんどは、この紫外線による皮膚老化(光老化(ひかりろうか)という)なのです。不要な日光に当たらないこと、屋外でスポーツなどを楽しむ時は帽子や長袖の服を着用し、場合によっては日焼け止めを塗るなど、紫外線を防御することがのちのちの皮膚の老化や皮膚がんの予防になります。これは医療経済面からみても効果的です。

また、最近は美容皮膚科が進歩し、皮膚の若返りが一部可能になっていますが、根拠のある治療かどうか、専門家の意見を聞いてから始めてください。

(4)生活習慣病を反映した皮膚の病気も増えています。とくに糖尿病(とうにょうびょう)は皮膚病と密接に関係しています。とりわけ、糖尿病に伴う足の病変は、足の切断の最大原因になっていますから注意が必要です。足の靴(くつ)ずれ、うおのめ、水虫などから細菌感染が起こったり、血のめぐりが悪くなったりして、皮膚組織が死んでしまうのです。

糖尿病がある場合は、足に合った靴を履き、毎日足を観察して気をつけてください。これを糖尿病のフットケアといいます。

(5)現在、爪の水虫は治せるようになりました。爪が白くにごったり、ぼろぼろしたりするのは水虫の可能性があります。爪の水虫はかゆくありませんから、放置されている場合が多く、家族に水虫菌をまき散らしていることがあります。

水虫かどうかの判断は専門医が検査をしないとわかりません。“自称水虫”患者さんの3分の1は水虫ではないからです。一度爪をよく観察してみてください。

(6)膠原病(こうげんびょう)では皮膚症状が初めに現れることが多く、早期発見につながります。寒い時に指先が白く変色したり、指先の皮膚が硬い、日に当たると顔に紅斑が出る、しもやけができやすい、髪の毛が抜けるなどの症状がある時も、専門医に診てもらってください。

膠原病を疑って検査をすれば、かなり早い時期に診断がつき、軽症のうちにコントロール可能になることがしばしばあります。

(7)薬や健康食品の副作用が皮膚に現れることもよくあります。薬による皮膚の病変は、やめれば治る軽症のものから命に関わるほど重症のものまでさまざまです。薬とも思っていない健康食品でも副作用で発疹が出ることは十分考えられます。体にぶつぶつ(発疹)が出た時は常用薬や健康食品が原因ではないかと考えてみることも大切です。

(8)高齢社会では床ずれ(褥瘡(じょくそう))も大きな社会問題です。褥瘡は、寝たきりなどで、一定の場所に圧迫がかかり続けることで皮膚組織が死んでしまうために起こります。とくにやせている人の骨が出っ張った部分が要注意です。入浴や着替えの際によく皮膚を観察し、少しでも発赤が消えないようであれば専門家に診てもらってください。

最近は、体圧分散寝具と呼ばれる床ずれ予防ベッドも普及しています。床ずれは何よりも予防が大切ですから、日頃から体位変換と皮膚観察を心がけてください。

本章の構成について

本章では、なるべく多くの皮膚病を網羅しました。したがって、かなりめずらしい病気も含めて解説してあります。その趣旨は、自分で診断をするというよりも、医師から病名を告げられた時にどんな病気なのかがわかるように配慮したものです。皮膚病は、診ないとわかりませんし、文章を読んでいるだけではどれも自分の皮膚病に思えてしまうかもしれません。ですから自己診断をせずに専門医を受診してから、知識を深めるために本章を活用してください。

執筆にあたっては、全国の新進気鋭の先生方にお願いしました。本章が皆さんの皮膚病の理解に役立つことを願っています。

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