病気事典[家庭の医学]

けつえき・ぞうけつきのびょうきのしゅるいとげんきょう

血液・造血器の病気の種類と現況

血液・造血器の病気の種類と現況について解説します。

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解説(概論)

血液の病気では、貧血(ひんけつ)、白血球数の異常(増加・減少)、出血傾向などがみられますが、その原因はさまざまです。何か異常に気づいた場合は専門医の診察を受けることが大切です。

貧血

体を動かした時の動悸(どうき)や息切れ、易(い)疲労感(疲れやすい)、全身倦怠感(けんたいかん)などの症状が現れます。ただし、貧血がゆっくり進行してきた場合には、代償機序(だいしょうきじょ)(補おうとするメカニズム)がはたらくため、症状が出にくくなります。

なお、立ちくらみによる「めまい」は、低血圧の人が立ち上がった時にさらに血圧が下がって起こるもの(起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)、いわゆる脳貧血)で、一般に、貧血によるものではありません。

最もありふれた貧血は鉄欠乏性貧血で、鉄剤による治療だけでなく、その原因を突きとめることが重要です。また、胃を切除した人は、数年後にビタミン-B12の欠乏による貧血(巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血)を起こすことがあります。

慢性的な貧血では、再生不良性(さいせいふりょうせい)貧血と骨髄異形成 (こつずいいけいせい)症候群(MDS)が代表的なものです。この両者は鑑別診断が難しく、見分けることができないケースもあります。骨髄異形成症候群は、不応性(ふおうせい)貧血といって再生不良性貧血に近いものから、急性白血病に移行しやすいタイプのものまで、さまざまな病型があります。骨髄異形成症候群は高齢者に多く、最近増えてきています。

そのほか、貧血は急性白血病による場合もあるので、骨髄(こつずい)検査(マルク)などで確実に診断することが大切です。

白血球増加

反応性のもの(感染症など)と、腫瘍(しゅよう)性のもの(慢性白血病と急性白血病)があります。

慢性白血病のひとつである慢性骨髄性白血病は、最近は健康診断で白血球増加として発見されるため、自覚症状のない早期に診断されるケースが増えています。慢性リンパ性白血病は、日本ではまれな病気です。

急性白血病には骨髄性とリンパ性がありますが、前者のほうが多くみられます。急性白血病では、白血球数がむしろ減少していることもあります。

そのほか、急性白血病では貧血症状や出血傾向(血小板減少、DIC[播種性血管内凝固(はしゅせいけっかんないぎょうこ)症候群]などによる)もしばしば現れます。とくに急性前骨髄球性(ぜんこつずいきゅうせい)白血病では、DICによる脳出血の危険性があるため、診断がついたら即刻入院・治療が必要です。

なお、白血球数が1万数千/mm3程度までで、ほかに異常のない場合は、基礎疾患のないことが多く、それほど心配する必要はありません。一方、慢性の白血球減少では、再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などを区別する必要があります。

リンパ節腫脹(しゅちょう)

腫瘍性のもの(悪性リンパ腫、がん転移など)、感染症に伴うものなどがあります。最近、悪性リンパ腫の発生頻度が高くなってきています。

悪性リンパ腫では、病型や病期などによって、治療方針や平均生存期間に大きな違いがあるため、リンパ節生検(組織の一部を採取して調べる検査)による正確な病理診断と予後因子の評価が重要です。

なお、若い女性の有痛性の頸部(けいぶ)リンパ節腫脹は、壊死性(えしせい)リンパ節炎によることも多く、その場合はしばらく経過をみていると軽快していくのが普通です。

免疫グロブリンの異常

多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)とその関連疾患が問題となりますが、経過観察ですむものから治療が必要なものまでさまざまです。

出血傾向

原因は、血小板の減少あるいは機能異常、凝固線溶系(ぎょうこせんようけい)異常、血管壁の異常に分けられます。EDTA(抗凝固薬の一種)を用いた採血では、偽性(ぎせい)血小板減少のこともあり、その場合は一般に問題ありません。

血小板減少の代表的なものは特発性血小板減少性紫斑病(しはんびょう)(ITP)で、下腿などの点状出血(径2〜3mm程度の赤い出血斑)が特徴的です。凝固線溶系の異常の場合にみられる出血斑(紫斑)は、もっと大きな溢血斑(いっけつはん)(径5mm〜2cm程度の皮下出血)になります。

血友病(けつゆうびょう)では、関節内出血や筋肉内出血のような深部出血が特徴的です。また、DICが認められる場合は、さまざまな基礎疾患を考える必要があります。

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