病気事典[家庭の医学]

とうにょうびょうにんぷ

糖尿病妊婦

糖尿病妊婦について解説します。

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糖尿病妊婦の解説(コラム)

 糖尿病の女性が妊娠・分娩を無事に終了するためには、妊娠する前からの治療が大切です。

 胎児の神経系、心臓、手、足などいろいろな臓器は妊娠初期に形成されますが、この時期に母体の血糖値が高いと、先天奇形のある子どもが生まれる可能性が高くなります。子どもの先天奇形を予防するためには、妊娠前に血糖コントロールをよくしておかなければなりません。

 また糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)や腎症(じんしょう)は、妊娠中に悪化しやすいため、妊娠前に合併の有無や程度を調べ、妊娠中に悪化する可能性が少ないことを確かめます。

 網膜症が悪化する可能性がある時には、眼科的な治療も考慮し、安定してから妊娠を考えます。腎症を合併している場合には、妊娠高血圧症候群(にんしんこうけつあつしょうこうぐん)や早産などの産科的合併症が起きたり、体重の少ない子どもが生まれる可能性が高くなるため、妊娠に関しては主治医と十分に話し合うことが必要です。

 妊娠糖尿病の項で述べたように、妊娠中の血糖コントロールが悪い場合には母体や胎児にさまざまな合併症が起きます(表8)。これらの合併症を予防するためには、妊娠中は厳格に血糖コントロールを行うことが大切です。

 妊娠時の薬物療法にはインスリンを用います。妊娠を希望している糖尿病の女性が経口血糖降下薬(けいこうけっとうこうかやく)を服薬している時には、妊娠前にインスリンに変更します。

 妊娠中は、妊娠時期によってインスリンの需要量は変化します。血糖自己測定の結果をもとに、血糖値が上昇しやすくなる妊娠中期以降には的確にインスリンを増やし、分娩終了後には減らさなければなりません。食事療法も胎児が順調に育ち、太りすぎによる母体の合併症を防ぐために行います。内科、眼科、産科、新生児科のチーム医療が必要であり、これらの科がそろった専門病院での治療、分娩をすすめます。

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