病気事典[家庭の医学]
まんせいじんうじんえん
慢性腎盂腎炎
慢性腎盂腎炎について解説します。
執筆者:
順天堂大学医学部腎臓内科学助教
井尾浩章
原因は何か
尿路に感染を起こしている細菌が何らかの原因で繰り返し腎盂に達するもので、尿流障害が背景にあります。つまり、腎盂・尿管の形態異常、尿路結石(にょうろけっせき)、腎盂・尿管の悪性腫瘍、膀胱尿管逆流現象、神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)などが原因として考えられます。
急性腎盂腎炎で感染する細菌は大腸菌が多いのですが、慢性腎盂腎炎ではその他の細菌の場合も少なくありません。また、1種類の細菌だけではなく2種類以上の細菌に同時に感染している混合感染のこともあります。必ずしも細菌が証明できない場合もあります。
症状の現れ方
通常ははっきりとした症状はありませんが、急性増悪を起こすと寒気や震えを伴った高熱や、腰や背中の痛み、尿のにごりや頻尿などの症状が認められます。慢性期には、微熱、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、腰痛、体重減少などの症状は軽微であることが多く、病気が進行すると高血圧になったり、腎不全に陥ったりします。片側性のものでは、病気が進行しないと症状としてはとらえられないことも多くあります。
検査と診断
尿検査で白血球や細菌が認められ、また過去に膀胱炎や急性腎盂腎炎などの尿路感染症の既往があれば慢性腎盂腎炎が疑われます。
尿路の異常や尿通過障害を調べるため、超音波、静脈性腎盂造影、膀胱造影、CTなどの検査を行います。また、血液検査では腎機能障害の程度を確認します。
区別すべき疾患としては、急性腎盂腎炎、慢性尿細管間質性腎炎(にょうさいかんかんしつせいじんえん)、腎結核(じんけっかく)などがあげられます。
治療の方法
できるだけ水分を多くとるようにします。薬は抗生剤を投与しますが、再発・再燃を繰り返す場合には、細菌尿が陰性化し、尿所見や臨床症状が改善したあとも、1カ月以上の継続投与が必要です。慢性化の誘因となっている尿通過障害があれば、尿の通りをよくする手術を検討します。
尿路の基礎疾患が除去できなければ、急性増悪を繰り返し、腎障害が進行します。腎不全が進行した場合は、透析療法が必要になります。
病気に気づいたらどうする
前述の症状がある時は、ただちに子どもは小児科、大人は泌尿器科か内科を受診します。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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