病気事典[家庭の医学]

じのしょうじょうとじゅしん

痔の症状と受診

痔の症状と受診について解説します。

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痔の症状と受診(直腸、肛門の病気)

解説(概論)

直腸・肛門に生じる病気は、良性のものから悪性のものまで、さまざまなものがあります。とくに多いのは肛門および、その周辺に生じる病気、つまり痔です。

痔は、俗に「大人3人集まればうち1人は痔である」というほど非常にポピュラーな病気で、大きく痔核(じかく)、痔瘻(じろう)、裂肛(れっこう)に分けることができます。

痔の症状と受診

痔の治療自体が問題となるのは当然ですが、そのほかに問題となるのは、痔の症状と似ているものに、がんやポリープ、炎症性腸疾患などの重要な病気があることです。痔と思って放置しておいて手遅れにならないよう、注意が必要です。

痔の症状は出血、脱出、痛み、かゆみなどですが、問題となるのは出血です。最近日本人に増えてきている大腸のポリープ、炎症、がんなどは、出血が主な症状だからです。

実際に肛門から出血したということで来院した方1000人を調べたことがありますが、うち92%は痔でしたが、3%はがんで、3%はポリープ、2%は炎症性腸疾患からの出血でした。

直腸、肛門の診察を受けるのは、場所が場所だけに恥ずかしいものです。また、診察の際に痛いことをされるのではないかという不安もあるようです。実際に痔だとすると手術になるのではないか、そして、痔の手術は手術のなかで最も痛いなどという誤った評判もあります。

そのようなわけで、実際に診察を受けるには決心が必要なようで、ともすれば受診が遅れてしまいがちです。

一度は専門医で診察を

がんやポリープからの出血であっても、本人が痔と思い素人治療を続けていて、発見が遅れてしまうことがあります。

出血の症状があった場合は、痔の薬を使うのもよいですが、2〜3週間使って症状が改善しない時は、専門の医師に診てもらう必要があります。

直腸、肛門の診察は痛くも恥ずかしくもありません。診察時の体位は横向きで行うなど、恥ずかしくないよう工夫されています。また、実際の直腸肛門の診察は簡単で、肛門内に指を入れて診察する指診や、肛門内に細い器具を入れて診察する肛門鏡診が主なものです。

外来の診察で不十分な場合は、より口側(奥のほう)を大腸内視鏡検査や注腸X線検査などで調べる場合もあります。

治療では生活療法も大切

治療は医師から病気の性状と治療法について十分説明を受けることが大切です。肛門の病気の場合は便秘や下痢を防ぎ便通を整える、局所を清潔にするなど、まずは基本的な生活療法を行うことが第一です。そして出血や痛み、はれ、脱出などの症状に対して適切な薬を使い治療します。それでもどうしてもだめな時は、最後の手段として手術となります。

実際に手術になる率は高くはありません。たとえば痔核では20%程度しか手術になりません。また、手術になったとしても15分程度ですみますし、痛みに対しても工夫され進歩しているので、心配することはありません。ただし、手術を受ける際は専門医を選びたいものです。肛門は微妙なはたらきをもった場所なので、正常な部位を傷つけないようにして手術を行う必要があります。誤った治療を受けて具合が悪くなり、一生後悔する人も少なくありません。

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