病気事典[家庭の医学]

せんてんせいしょくどうしっかん

先天性食道疾患

先天性食道疾患について解説します。

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どんな病気か

先天性食道疾患はまれな病気であり、先天性食道閉鎖症(へいさしょう)、先天性食道狭窄症(きょうさくしょう)などがあげられます。なかでも食道閉鎖症は、食道の先天性疾患の代表的なものとして知られています。

食道が胃に連続することなく途中で閉鎖していたり、また気管食道瘻(ろう)(気管と食道が交通している状態)の併存が多くの症例で認められます。食道閉鎖と気管支瘻の関係から、病型分類がなされています(図1)。

Gross による食道閉鎖の病型分類ではC型が最も多く、口側食道は閉鎖していて、胃側食道は気管と交通している症例です。次に多い病型はA型で、口側食道と胃側食道は盲端(もうたん)(閉じている)となっていて、気管食道瘻のない症例です。

原因は何か

先天的なものであり、その原因については不明です。高率に他の臓器の合併奇形が認められます。心血管、消化管、泌尿器系の障害などがあげられ、とくに心臓奇形の合併は頻度的にも多く、予後を左右する重要な要因のひとつです。

症状の現れ方

多くの症例で、生後まもなく何らかの症状が現れます。唾液(だえき)を飲み込んでも食道が閉鎖しているため、口から泡状に流れ出てしまいます。呼吸困難や肺炎の併発から診断される症例もあります。頻度的にも多い Gross のC型であれば、呼吸によって胃は空気で拡張し、嘔吐によって胃内容が気管に流れ込み、肺炎を併発する要因となります。

検査と診断

出生前診断のできる症例もあり、羊水過多の所見や胎児の超音波検査で胃泡(いほう)が確認しがたい所見があった時など、本疾患が疑われます。

X線検査では、鼻から細いカテーテルを挿入すると、食道閉鎖部でカテーテルの反転する所見が得られます。

治療の方法

外科手術が必要であり、基本的には、まず気管と食道の交通を遮断(しゃだん)する処置(気管食道瘻の閉鎖)が必要です。次に離れた口側食道と胃側食道を吻合(ふんごう)する処置が必要となります。食道閉鎖と気管食道瘻の状況により、術式も大きく異なります。一期的根治術では気管食道瘻の結紮(けっさつ)、切離と食道吻合が同じ日に行われます。全身状態の不良な症例や閉鎖食道間の距離が離れた症例では、分割手術が選択されます。

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