病気事典[家庭の医学]

はなのびょうきのげんきょう

鼻の病気の現況

鼻の病気の現況について解説します。

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鼻アレルギーの増加

鼻の病気に関する症状としては、鼻閉(びへい)、鼻漏(びろう)(鼻汁(びじゅう))、鼻出血(びしゅっけつ)、嗅覚障害などがあります。鼻漏については、昔のような膿性(のうせい)鼻漏は少なくなり水様性(すいようせい)鼻漏が多くなっています。いわゆる「はなたれ小僧」が、ほとんど見かけられなくなったことでもわかります。これは、鼻の病態が変化し、化膿性の急性副鼻腔炎(ふくびくうえん)や慢性副鼻腔炎が減少、あるいは軽症化し、鼻アレルギーが増加したためです。

鼻疾患の代表である副鼻腔炎の病態は以前と比べ大きく変化し、より軽症化しています。慢性副鼻腔炎患者の鼻内を見ると、ブヨブヨとした鼻茸(はなたけ)が充満していて鼻で息のできない状態をよく見かけたものです。しかし現在では、むしろ鼻茸が見られるのは鼻アレルギー患者のほうが多くなっています。鼻茸の原因が、アレルギー性炎症の産物に変化してきていることによるものです。

以前は慢性副鼻腔炎患者の多くが副鼻腔手術の適応でした。しかし、軽症化が進んだ現在では、多くの場合、まず比較的長期の薬物療法が行われ、その結果によって必要な場合に手術が行われるようになりました。もちろん、はじめから手術を選択する必要のある場合も少なからず存在します。

治療方法の進展

副鼻腔炎手術も大きく様変わりし、現在は内視鏡と手術器具を鼻孔(びこう)から挿入して行う内視鏡下鼻・副鼻腔手術が一般的です。また、副鼻腔は眼球、視神経、頭蓋底(とうがいてい)、内頸動脈(けいどうみゃく)などの重要臓器(危険部位)に囲まれているため、CTとそのデータで手術操作部位を確認しながら手術を行うための装置、すなわちナビゲーション装置を用いて手術を行う機会が増えています。この装置は、副鼻腔炎の手術に限らず、鼻・副鼻腔の良性あるいは悪性腫瘍や外傷の手術にも用いられています。

日本では、アレルギー性鼻炎を引き起こす抗原(原因物質)として、ハウスダスト(ダニなど)、スギ花粉、ヒノキ花粉、ブタクサなどがあげられます。もはや花粉症は国民病でもあり、春の天気予報で花粉情報が放送されるようになって久しくなりました。

アレルギーへの対応は、まず抗原暴露(ばくろ)(原因物質と接触すること)を避けることが大切です。その点で、最近とくに春になるとマスクや眼鏡をかける人の数が増加していることは評価されます。効果的な薬物や減感作療法(げんかんさりょうほう)も開発され、今後さらに治療方法が進むものと期待されています。

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