病気事典[家庭の医学]
どうこうのせんてんいじょう
瞳孔の先天異常
瞳孔の先天異常について解説します。
執筆者:
大阪赤十字病院眼科副部長
田口 朗
先天性無虹彩症(せんてんせいむこうさいしょう)
どんな病気か
先天性無虹彩症は、いわゆる茶目の部分が欠損している状態のことで、5~10万人に1人の頻度で認められます。3分の2は常染色体優性遺伝で、3分の1は散発性です。
原因は何か
眼の組織形成にかかわるPAX6という遺伝子の変異によって起こります。PAX6は眼のいろいろな組織に関与しているため、この遺伝子の異常により無虹彩症の他にもいろいろな合併症(黄斑(おうはん)低形成や無眼球症など)が起こることがあります。
症状の現れ方
乳幼児期から羞明(しゅうめい)(まぶしがり)の症状が起こります。また角膜混濁・白内障・水晶体脱臼(だっきゅう)・隅角形成不全に伴う緑内障・黄斑低形成などの合併症により、視力不良や眼球振盪(しんとう)が起こります。全身的には腎臓のウイルムス腫瘍(しゅよう)を合併することがあります。
検査と診断
眼科での細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査で診断できます。また眼合併症の有無確認のため眼底検査などを行います。ウイルムス腫瘍の合併を念頭に小児科・泌尿器科における定期的な腎臓の検査を受けることが必要です。
虹彩欠損(こうさいけっそん)
どんな病気か
虹彩欠損は虹彩の一部(主に下方のやや鼻側)が欠損している状態です(図58)。常染色体優性遺伝形式をとることが多く、両眼性が多いです。
原因は何か
眼球は発生の過程で(胎生6~7週に)、ちょうど手掌(しゅしょう)を下に向けて卵をつかむ時の手の形のように形成されていきます。この際の親指の先と他の指先のすきまにあたる部位を眼杯裂(がんぱいれつ)(胎生裂(たいせいれつ))といいますが、この眼杯裂の閉鎖不全が原因で起こります。したがって下方に欠損が起こります。
虹彩だけでなく、毛様体(もうようたい)や脈絡膜(みゃくらくまく)、視神経にも部分的な(下方)欠損を伴い、また小眼球症、前房・隅角発育異常に伴う緑内障を合併することもあります。全身的には、耳介奇形(じかいきけい)、心奇形、性器低形成、口唇裂(こうしんれつ)、精神発育遅滞などを合併することがあります。
症状の現れ方
自覚症状がなく、眼科での検査で初めて指摘されることがあります。脈絡膜欠損を合併する場合は(主に上方視野に)視野障害を認めます。また合併症に応じて視力低下を生じることもあります。
治療の方法
通常は未治療のまま経過観察でよいのですが、合併症を生じた場合は、手術を含め眼科的管理が必要です。
情報提供元 :
(C)株式会社 法研
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