病気事典[家庭の医学]
つうふう
痛風
痛風について解説します。
執筆者:
山口県立総合医療センター整形外科・診療部長 田中 浩
どんな病気か
血液中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症(こうにょうさんけつしょう))で、足趾(そくし)(あしのゆび)や足首、膝などに起こる急性の関節炎です。とくに足の母趾(ぼし)の付け根の関節(母趾MP関節)が最も多くみられ、初めて発症される人の7割がこの部位です。
日本での有病率は0・1~0・3%と推測され、90%以上が男性です。発症年齢は40代前後に多く、最近は若年化の傾向がみられます。
原因は何か
高尿酸血症が続くと尿酸の結晶が関節の組織に沈着し、その結晶が関節内に遊離するとそれに反応して炎症が起こるとされています。尿酸はプリン体という物質の最終産物で、主に肝臓で産生され、腎臓から排泄されます。
高尿酸血症は、尿酸産生過剰あるいは排泄低下、あるいはそれらの混合のいずれかにより現れます。原因は不明ですが、ある程度の体質(遺伝性)が関与しており、アルコール(とくにビール)や甘い飲み物なども増悪させます。典型的なタイプとしては、活動的な中年男性で、アルコールや肉食を多く摂取する習癖がある人に多いようです。ただ、他の原因として、多発性骨髄炎(たはつせいこつずいえん)、悪性(あくせい)リンパ腫(しゅ)、悪性貧血(ひんけつ)、白血病(はつけつびょう)などの病気がひそんでいる場合や、ある種の利尿薬などで尿酸値が上がる場合があるので注意が必要です。
症状の現れ方
発作前に前兆(チクチクする、圧迫感、熱っぽいなど)を自覚し、6~12時間後に発作が始まることが多いようです。発作時は激烈な痛みで、はれ、発赤、熱感を伴います。発作は通常、24時間以内にピークを迎え、3~4日後には徐々に改善し、7~10日で自然におさまります。
放置すると発作を繰り返し、だんだんと症状が増悪してきます。また、発作の間隔が次第に短くなり、慢性の関節炎へと移行します。進行すれば関節軟骨が傷んで骨に欠損が生じ(びらん)、関節の変形や機能障害が残る場合もあります。
痛風結節(けっせつ)が、肘、足の関節周囲や耳にできることがあり、時に破れて皮膚潰瘍(かいよう)を生じます。また、尿酸塩が沈着して尿路結石(にょうろけっせき)、腎障害(痛風腎(つうふうじん))、虚血性心疾患などが問題になることもあります。
検査と診断
発作時の血液検査では、白血球数の増加、赤血球沈降速度の亢進、C反応性蛋白(CRP)の陽性など、炎症性の変化がみられます。急性の関節炎で、血液中の尿酸の値が高ければ診断は容易ですが、約4分の1では発作時の尿酸値は正常です。高尿酸血症は男女とも7・0㎎/dlを超えるものと定義されています。関節の液を検査して、尿酸の結晶を証明することも診断には非常に有用です。
X線検査では、発作を繰り返している例では骨の欠損(びらん)や変形を認めることもあります。進行すれば、関節の変形や破壊がみられることもあります。
治療の方法
(1)発作の前兆時
発作の前兆時に、コルヒチンを内服すると未然に発作を予防することができます。ただし、いったん発作が始まるとその効果が弱まります。
(2)発作時
関節の安静を保ち、非ステロイド性抗炎症薬で痛みを抑えます。いろいろな種類がありますが、血中濃度の上昇が速く、血中半減期が短いものを使用します。症状が強い時は、副腎皮質ステロイド薬の内服または関節内注射で対応することもあります。
尿酸コントロール薬(後述)は発作時に内服すると、尿酸値が変動して関節炎が逆に悪化することがありますので、2~4週後から服用します。
(3)発作がない時
発作がない時は、尿酸産生阻害薬(アロプリノール)または尿酸排泄促進薬(プロベネシド、ベンズブロマロン)で高尿酸血症を改善させます。血清尿酸値5~6㎎/dlを目標とし、少量から開始して維持します。尿をアルカリ化して尿路結石を防止する目的で、重曹やウラリットを1日2~3g内服します。
また、高尿酸血症の治療には、薬物治療だけでなく生活習慣の改善が重要です。肥満の解消、アルコール飲料の制限、プリン体の摂取制限、十分な水分の摂取、運動、ストレスの解消などがすすめられています。
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