病気事典[家庭の医学]
あっぱくせいにゅーろぱちー
圧迫性ニューロパチー
圧迫性ニューロパチーについて解説します。
執筆者:
興生会相模台病院副院長/北里大学名誉教授
齋藤豊和
原因は何か
体外からの圧迫だけでなく、神経周囲組織の肥厚(ひこう)、腫瘤(しゅりゅう)の圧迫でも起こります。
末梢神経幹が圧迫されると、(1)神経伝導ブロック(数日から数週で改善する)、(2)軸索(じくさく)の障害(挫滅(ざめつ))、(3)神経断裂などの状態が起こり、(2)、(3)の場合、神経遠位端はワーラー変性(神経軸索が障害を受けると、その部位から末梢が変性してしまうこと)の状態になり、神経機能の回復が困難になります。神経線維が、たとえば腋窩(えきか)(わきの下のくぼんだところ)、頸椎(けいつい)などの高位(近位)で圧迫を受けると、その末梢部では軽度の圧迫でも容易に軸索の障害が現れやすくなってきます。
また、アルコール中毒、糖尿病、低栄養状態などによっても損傷を受けやすくなるので、これら全身疾患の存在にも注意が必要です。
まれですが、何度も軽い圧迫で麻痺が誘発される遺伝性圧過敏性ニューロパチーもあります。
症状の現れ方
圧迫性ニューロパチーには、急性に起こるものと慢性・反復性に起こるものとがあります。
急性圧迫性のものは、駆血帯(くけつたい)の長時間圧迫、長時間の正座、手枕での熟睡(土曜の夜の麻痺)、新婚の夜の麻痺(腋窩部に花嫁の頭を乗せる)などで現れます。とくに橈骨(とうこつ)神経麻痺は垂れ手(手指や手首を水平・挙上できなくなる)としてよく知られています。急性発症の場合、リハビリにより多くは短期間(数日から月単位)で回復します。
慢性・反復性圧迫性のものは月・年単位で現れ、その大部分は絞扼性(こうやくせい)です。代表的なものは手根管症候群ですが、そのほかに肘管(ちゅうかん)症候群(肘(ひじ)での尺骨(しゃっこつ)神経麻痺)、総腓骨(そうひこつ)神経麻痺などがあります。
下肢に起こる総腓骨神経麻痺は、やせ型の人が長時間足組みをしたあとに現れてきます。膝窩部(しっかぶ)で腓骨に神経が押しつけられ、垂れ足(足指や足首を上げることができない)を来します。麻酔、長期の臥床(がしょう)(寝込む)、ギプスなども原因となります。時に膝窩後部はくぼんでおり、ひとつのコンパートメント(個室)をつくっています。何らかの原因でこのくぼみがはれると、神経(動脈、静脈なども通過)の圧迫が起こり、下腿の筋萎縮を生じてくるために、早期にはれを除去する必要もあります。
治療の方法
治療法は原因によりさまざまです。
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