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病気事典[家庭の医学]
けっせんようかいやくてぃーぴーえーはどんなときにゆうこうか
血栓溶解薬t−PAはどんな時に有効か
血栓溶解薬t−PAはどんな時に有効かについて解説します。
執筆者:
国家公務員共済組合連合会立川病院院長 篠原幸人
血栓溶解薬t−PAはどんな時に有効かの解説(コラム)
2005年10月、厚生労働省は、欧米などで認可されているt‐PAという薬が日本でも使える許可を出しました。
しかし、この薬の効果は、一部マスコミのとり上げ方の影響もあり、過大評価されている面もあります。
t‐PAは軟らかい脳の血栓(けっせん)や塞栓(そくせん)を溶かし、途絶えていた血流を回復してくれる作用があります。適切な方法で適応のある患者さんに使えばすばらしい効果を発揮します。しかし、血栓をすべて溶かすわけではありません。また梗塞ができてから3時間以上経過した場合は(欧米では4時間半ともいわれていますが)、血流が再開して壊死(えし)に陥(おちい)った脳組織に再び血液が急激に流れ込む結果、脳に出血(出血性梗塞(しゅっけっせいこうそく)や血腫(けっしゅ))を起こし、かえって症状が悪化したり患者さんが死亡してしまうこともあります。また、その他の場合でも出血が合併する危険があります。
t‐PAが使える条件は、(1)発症3時間以内で、かつ専門の医師がt‐PAの効果が十分に期待できると考えた患者さんで、(2)血圧が非常に高くはなく、血液検査の結果もこの治療に耐えられる状態で、(3)画像診断でも梗塞が進んでいないことが確認でき、(4)最近3カ月以内に脳卒中の発症がなく、(5)最近2〜3週間以内に大手術や脳以外の部位にも大出血がなく、(6)大動脈解離(だいどうみゃくかいり)などがないことです。
他にも高齢の方で重篤な場合は気をつけて使用する必要があります。いずれにしても主治医と患者さん本人ないしはご家族がよく相談して決めるべき治療法です。
発症3時間以内でもt‐PAを使用しなくてよい場合もありますし、逆に3時間を過ぎてt‐PAは使用できない患者さんでも、他にもいろいろ治療法があります。いずれにしても、脳卒中のことがよくわかる医師のいる病院に救急隊の方とよく相談して1分でも早く患者さんを搬送することが最も大切です。t‐PAが使えないから患者さんは助からないというのは誤った考えであることも、よく認識してください。
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