縦隔炎病気事典[家庭の医学] -病院検索ｉタウン

執筆者: 川崎医科大学附属川崎病院副院長・呼吸器病センター長沖本二郎

どんな病気か

縦隔とは、上方は胸郭(きょうかく)入口部、下方は横隔膜(おうかくまく)、前方は胸骨、後方は脊柱(せきちゅう)によって囲まれた腔です。簡単には、左肺と右肺の間の領域と考えればよいでしょう。この縦隔に感染を起こした病気を、縦隔炎と呼びます。

内視鏡検査や異物誤嚥(ごえん)による食道の穿孔(せんこう)（孔(あな)があく）、破裂に続いて起こることがほとんどです。食道がんや食道憩室(けいしつ)の穿孔に続いて起こることもあります。

食道に孔があくと、胸骨後方の激痛、悪寒戦慄(おかんせんりつ)、発熱が現れます。重症になると細菌が血液のなかに入り、敗血症(はいけつしょう)を発症する場合もあります。

内視鏡検査に引き続いて胸骨後方の激痛などを訴えた場合や、食道がんの既往のある人が同様の症状を訴えた場合には、本症を疑って胸部Ｘ線を撮影します。胸部Ｘ線像では、縦隔陰影の拡大や縦隔気腫(きしゅ)がみられます。血液検査では、白血球数の増加やＣＲＰが高値を示します。

強力な抗菌薬（ペニシリン、セフェム系、カルバペネムなど）を投与します。小さな孔であれば保存的治療でも治癒しますが、大きなものでは外科的処置が必要です。孔がふさがるまでは、絶飲絶食として点滴で栄養を補給します。

原因が食道がんの場合、予後は極めて不良ですが、ほかの原因の場合ではおおむね治ります。

患者さんよりも医師が、この疾患を疑うことが重要です。内視鏡検査に引き続いて胸骨後方の疼痛を患者さんが訴えた場合には、すみやかに胸部Ｘ線を撮影する必要があります。

患者さんも、内視鏡検査から帰宅後に胸骨後方の疼痛を感じたら、すぐに内視鏡検査をした医師に連絡をとります。