病気事典[家庭の医学]

きゅうせいこきゅうきゅうはくしょうこうぐん

急性呼吸窮迫症候群

急性呼吸窮迫症候群について解説します。

執筆者:

どんな病気か

しばしばARDSと略されます。低酸素の程度が軽いものを急性肺損傷といいます。

さまざまな原因に続発する急性の肺の損傷です。肺の間質(かんしつ)や肺胞腔(はいほうくう)(空気を入れる袋状のところ)に水分と細胞浸潤(しんじゅん)がみられ、酸素化(血液中に酸素を取り込むこと)が損なわれます。その本体は、血管内皮細胞が損なわれて血管の透過性が進み、その結果もたらされる急性肺水腫(はいすいしゅ)で、極めて予後が悪い状態です。心不全が原因のうっ血が原因の肺水腫とは異なります。

また、低出生体重児にみられる特発性呼吸窮迫症候群は、肺表面活性物質(肺サーファクタント)の不足によるため、ARDSとは病態が異なります。

原因は何か

原因としてはショック、とくに敗血症(はいけつしょう)(菌が血中に入った状態)がその代表です。そのほか、重症肺炎粟粒結核(ぞくりゅうけっかく)、多発外傷急性膵炎(すいえん)、術後、輸血などに続いて急速に発症してくる予後のよくない合併症です。

ARDSでは腎不全、心不全、肝不全を合併することが多く、ある刺激に対して生体が示す過度の全身的炎症から多臓器不全が引き起こされますが、その部分症とも考えられます。マクロファージからの組織壊死(えし)因子と好中球(こうちゅうきゅう)からのエラスターゼの産生が、病態の進行に大きく関わります。

症状の現れ方

呼吸不全のため頻(ひん)呼吸、呼吸困難、チアノーゼ、頻脈などがみられます。

検査と診断

胸部X線像で両側の肺に急速に浸潤影が認められ、通常の酸素投与では低酸素血症は改善しない場合で、うっ血性心不全の存在が否定できれば診断されます。

治療の方法

原因となった基礎疾患の治療を行いつつ、呼吸管理導入の時期を逃さないように注意します。近年、肺の保護的人工呼吸管理法が行われるようになり、生存率が改善しました。これは1回の換気量を低めに設定し、動脈血二酸化炭素分圧を80Torr程度にまで上昇してもよいとする方法です。

薬物療法では、抗エラスターゼ製剤も試みられています。

情報提供元 : (C)株式会社 法研執筆者一覧
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。