病気事典[家庭の医学]

はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん(でぃーあいしー)

播種性血管内凝固症候群(DIC)

播種性血管内凝固症候群(DIC)について解説します。

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播種性血管内凝固症候群(DIC)の解説(コラム)

 播種性血管内凝固症候群(DIC)とは、さまざまな理由によって血管内で血液凝固系が活性化され、全身的に血管内で血液が凝固し、細小血管に多数の微小血栓(けっせん)を生じる病態のことです。

 このため、腎臓をはじめとする主要な臓器は循環障害に陥り、またさまざまな血液凝固因子が消費されて、強い出血傾向が現れます。

 妊娠時にはほとんどの血液凝固因子が増え、血液は凝固亢進状態を示すようになりますが、産科DICの特徴は、大出血に併発または続発することが多く、胎盤や羊水などの外因系組織トロンボプラスチン(血液凝固因子のひとつ)が血管内に流入して発生することがあるために、急速な経過をとることが多い点です。そのために、診断と治療は迅速に行われる必要があります。

 産科DICの治療の原則は、DICの原因となった基礎疾患のすみやかな除去です。たとえば常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)や子宮内胎児死亡では、子宮内容物の早期の除去が必要です。

 ただし、DICは手術操作によって悪化し、致死的な大出血を来すことがあるので、術前に必要に応じて補充療法や抗凝固線溶療法を行って、止血機能の改善を図っておくことが重要です。

 産科DICの多くは消費性凝固障害の状態にあるので、輸血による凝固因子や赤血球、血小板の補充が必要です。また、凝固・線溶系、キニン系など全身の酵素活性が亢進しているため、抗トロンビン作用や抗プラスミン作用、抗キニン作用などをもつ蛋白(たんぱく)分解酵素阻害薬などが用いられます。

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