病気事典[家庭の医学]

こうげんびょう

膠原病<お年寄りの病気>

膠原病<お年寄りの病気>について解説します。

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膠原病とは

クレンペラーによって提唱された膠原病は、病理形態学的に全身の膠原線維(こうげんせんい)にフィブリノイド変性を来し、その原因として自己免疫現象が考えられている疾患群です。

全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症(ぜんしんせいこうかしょう)(PSS)、皮膚筋炎(ひふきんえん)(DM)、関節リウマチ(RA)、リウマチ熱(RF)、結節性多発性動脈炎(けっせつせいたはつせいどうみゃくえん)(PN)の6疾患を古典的膠原病といいます。

現在ではこれに加えて、リウマチ性多発筋痛症側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)(巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん))、多発性筋炎(たはつせいきんえん)、シェーグレン症候群混合性結合組織病(MCTD)、重複症候群、アレルギー性肉芽腫性血管炎(にくげしゅせいけっかんえん)ウェゲナー肉芽腫症などの類縁疾患を含めて扱うのが一般的です。本項では、高齢者によくみられるものの特徴を解説します。

関節(かんせつ)リウマチ

高齢者での特殊事情

一般に女性に多いのですが、高齢者では性差は縮まります。高齢者では一般に疾患活動性に対する予後がよい、リウマチ因子陽性率が低い、リウマチ性多発筋痛症のような発症をみることがある、などの特徴があります。これとは別に、高齢者における関節リウマチ(RA)の病像には罹病(りびょう)期間の長さを反映していることがあり、この場合には、関節の変化、骨粗鬆症(こっそしょうしょう)が高度で、長期の薬物療法の結果としての臓器障害の合併も多くみられます。

関節リウマチとしての経過が長い例で、時に発熱や体重減少などの全身症状が強く、多発性神経炎(たはつせいしんけいえん)、胸膜炎(きょうまくえん)・心膜炎(しんまくえん)、心筋炎(しんきんえん)、間質性肺炎(かんしつせいはいえん)などを起こして、予後不良となる場合があります(悪性関節リウマチまたはリウマチ性血管炎)。

治療とケアのポイント

高齢者の関節リウマチの治療には、以下のような特徴、注意点があります。

(1)高齢発症の関節リウマチでは、病初期における疾患活動性が高い場合でも、疾患の予後は比較的良好で、治療により寛解(かんかい)する確率が高い。

(2)治療効果が部分寛解にとどまったとしても、経過のなかで関節機能障害によって日常生活動作の大きな低下を来すに至るのは、一般に発症してから10年前後なので、治療にあたっては患者さんの平均余命を考慮する必要がある。

(3)長期の罹病をへて高齢に至った患者さんの場合、すでにさまざまな治療が試みられており、高い活動性が持続している場合でも、新たな治療で大きな効果を期待することはできない。

(4)薬剤の副作用発現の危険性が高いことなどを念頭に置いて薬剤を選択する。

(5)高齢者ではとくに骨粗鬆症の予防・治療に留意する。

リウマチ性多発筋痛症(せいたはつきんつうしょう)

高齢者での特殊事情

主に50歳以上、とくに70代に好発し、男女比は1対2とやや女性に多く発症します。四肢近位部と体幹、とくに頸部(けいぶ)、肩、腰部のこわばりと痛みを特徴とし、多くは対称性、多発性です。痛みは自発痛で、圧迫や運動によってそれほど変化しないのが特徴です。微熱、全身倦怠感(けんたいかん)、食欲不振、体重減少などの全身症状を伴うこともあります。

検査は赤血球沈降速度(血沈)亢進、C反応性蛋白(CRP)上昇、フィブリノゲン上昇などの炎症所見が主体で、特異的な所見はありません。筋力低下、筋萎縮(きんいしゅく)は認められません。

治療とケアのポイント

治療は非ステロイド性消炎鎮痛薬のみで改善する場合もあるので、まずこれを試みます。効果が十分でない時は、少量のステロイド薬を使用すればすみやかに症状の改善がみられます。

しばしば側頭動脈炎を合併し、この2つの疾患は病因的に密接に関係していると考えられていますが、原因は明らかではありません。

また、基礎に悪性腫瘍がひそんでいることがあり、とくにステロイド薬に対する反応が悪い場合には、注意が必要です。

側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん)(巨細胞性動脈炎(きょさいぼうせいどうみゃくえん))

高齢者での特殊事情

50歳以上の年齢層に発症し、男女比はほぼ1対1・6程度で、女性にやや多い傾向があります。理由は不明ですが、日本ではまれな疾患です。側頭動脈のみでなく、全身の中・大動脈の炎症を来し、原因は不明です。典型的な例では、有痛性または肥厚性の側頭動脈を触れることができます。

発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状を伴います。頭痛は拍動性(ズキズキする痛み)で、片側のことが多く、夜間に悪化しやすい特徴があります。虚血症状として、頭痛のほか、視力障害(時に失明)、舌壊死(ぜつえし)、咀嚼筋筋痛(そしゃくきんきんつう)、大動脈弓(だいどうみゃくきゅう)症候群がみられることがあります。

検査による所見は、リウマチ性多発筋痛症と同様、炎症所見が主体で、特異的なものはなく、赤血球沈降速度の高度亢進がみられます。側頭動脈の生検(組織を採取して調べる検査)によって診断できます。

治療とケアのポイント

治療には副腎皮質ステロイド薬が有効です。視力障害など重篤な血流障害に基づく症状が認められる場合には、治療を急ぐ必要があります。

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