病気事典[家庭の医学]

へんけいせいかんせつしょう

変形性関節症

変形性関節症について解説します。

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変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)

変形性膝関節症は、変形性関節症のなかで最も多く、「年をとって膝が痛い」という場合のほとんどがこの病気です。女性に起こることが多く、ほとんどが内反型、すなわちO脚状の変形を伴い、病気が進むにつれて内側の関節面の軟骨がすり減っていきます。

症状の現れ方

典型的な症状は、長距離歩行時の痛みから始まり、正座ができなくなり、立ち上がりやしゃがみ込み、階段昇降がつらくなり、次いで歩行もしづらくなってくるといったものです。一方で、安静時の痛みは少ないのが普通です。時に水がたまることもありますが、通常何カ月も続きません。進行してくるとO脚状の変形が強くなり、膝は慢性的にはれて大きく見え、曲げ伸ばしの角度が徐々に悪くなってきます。

治療とケアのポイント

内服薬、外用薬、注射、理学療法、手術などです。

内服薬は、消炎鎮痛薬が主になります。常用すると胃潰瘍(いかいよう)などが心配なので、痛みが強い時だけ、あるいは外出の予定がある時だけ服用するといった服用方法がよいと思います。ただ、安静時も痛い、痛みで眠れないといった場合は、1日2~3回、時間どおりに服用する場合もあります。

外用薬は、皮膚からの吸収がよい消炎鎮痛薬の入った湿布、塗り薬を使います。冷湿布と温湿布のどちらがよいかよく聞かれますが、今の外用薬は消炎鎮痛成分の効果を期待しているので、冷たいか温かいかで大きな差はありません。両方使ってみて自分に合うほうを決めるのもひとつの方法です。ただ、温湿布は皮膚への刺激が強いので、かぶれが多い傾向にあります。

注射は、主にヒアルロン酸という、関節液や軟骨の成分を含んだ注射剤をよく使います。潤滑剤としてのはたらきや炎症を抑える効果があります。また、ステロイド薬を使うこともあります。炎症や痛みを抑えるのに高い効果がありますが、使いすぎると逆に軟骨や靭帯(じんたい)を弱くする心配があります。

理学療法では、温熱療法がよく行われます。いわゆる“デンキをかける”という治療もこれにあたります。効果は一時的な場合から、すっかりよくなる場合まで、膝の状態によってさまざまです。1~2カ月続けてみて、効果があるようなら続けます。太ももの筋肉(大腿四頭筋(だいたいしとうきん))を鍛えることも重要です。大腿四頭筋を鍛えるには、あお向けに寝た状態で、片脚を伸ばしたままで挙上します。かかとが床から10㎝程度離れたところで止めて、5~10秒間。これを10~20回行います。この運動を3カ月続けると、膝の痛みが明らかに改善すると報告されています。

変形性膝関節症の手術には、高位脛骨(こういけいこつ)骨切り術、関節鏡手術、人工膝関節全置換術(じんこうひざかんせつぜんちかんじゅつ)などがあります。病院では、痛みの程度や歩行能力、年齢、X線所見、患者さんの希望などを考慮して手術の適否を決定し、手術法を選択します。人工関節置換術は、長期成績も良好で手術後のリハビリテーションも早く進むので、年々手術件数が増えています。ただし、手術した関節への細菌感染、静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)(いわゆるエコノミークラス症候群)などの合併症も起こりえるので、担当の医師とよく相談して決めましょう。

変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)

多くの場合、先天性股関節脱臼(せんてんせいこかんせつだっきゅう)(赤ちゃんの時の股関節脱臼)や臼蓋(きゅうがい)形成不全症からの二次性変形性股関節症です。臼蓋形成不全症は、股関節の骨盤側の受け手である臼蓋が浅い状態で、関節の一部分に荷重がかかりやすく、軟骨がすり減り、関節症が進みやすくなります。高齢者の場合、とくにこのような背景がなく、加齢とともに徐々に進行する一次性変形性股関節症も増えています。

症状の現れ方

主に立位、歩行時の股関節痛と、股関節の可動域制限です。安静時の痛みは強くありません。可動域制限は、脚がまっすぐ伸びなくなって、広がりにくくなります。また、軟骨とともに骨もすり減ってくると脚の長さが短くなり、歩きにくくなってきます。

治療とケアのポイント

治療は変形性膝関節症とほぼ同様で、理学療法、消炎鎮痛薬などの内服および外用、それに手術です。減量は重要で、減量によって痛みを軽くして進行を遅らせることができます。また、可動域制限が進まないように、脚の付け根をまっすぐ伸ばすこと、外側に広げるようにすることが大切です。筋力訓練も症状をやわらげ、進行を抑えることができます。主に中殿筋(ちゅうでんきん)と腸腰筋(ちょうようきん)を鍛えます。中殿筋は、股関節を外に広げるための筋肉ですが、同時に片脚でバランスよく立つために必須で、歩行のためにも重要です。この筋肉を鍛えると股関節の安定性が増します。鍛え方は、横を向いて寝た状態で、片脚を伸ばしたまま横に広げて、足先を10㎝程度浮かしたところで5~10秒間保持します。これを10~20回続けます。また腸腰筋も大切で、これはあお向けに寝た状態で、片脚を伸ばしたままで挙上します。かかとが床から10㎝程度離れたところで止めて、5~10秒間。これを10~20回行います。

関節変形が進行して、短い距離しか歩けなくなり生活に支障を来すようになると、手術を考える時期です。手術には骨切り術と人工股関節置換術(じんこうこかんせつちかんじゅつ)があります。膝と同様に人工股関節置換術も、長期成績が良好でリハビリテーションの進みが早いといった利点から、手術件数が年々増えています。ただし、手術した関節への細菌感染、静脈血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)、関節の脱臼などの合併症も低い確率ですが起こることがあるので、担当の医師とよく相談して決めましょう。

手指(しゅし)の変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)

手の指の遠位指節関節(えんいしせつかんせつ)(指先の関節)の変形性関節症はヘバーデン結節と呼ばれるもので、中年以降の女性に大変多い変化です。誘因はとくになく、関節が痛んではれて、まっすぐ伸びなくなってきます。痛みの程度は強弱さまざまです。

治療は消炎鎮痛薬の外用(貼り薬や塗り薬)、場合によっては消炎薬の内服や関節内注射を行います。自然経過でも1~2年で痛みがなくなり、少し関節が曲がった状態で治ります。

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