病気事典[家庭の医学]

さいきんせいげりしょう

細菌性下痢症

細菌性下痢症について解説します。

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どんな病気か

消化管に感染する細菌によって、下痢(しばしば粘血便)を生じる病気の総称です。細菌性(胃)腸炎とも呼びます。食中毒の形をとることも多く、ペットからの感染もあります。腸管出血性大腸菌(ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん)O(オー)157のように、大規模な集団発生をみることもあります。コレラ細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症は感染症法の三類感染症であり、医師による届け出が必要で、かつ学校伝染病に指定されており、出席停止の措置がとられます。

原因は何か

サルモネラ、病原大腸菌(O157を含む)、カンピロバクターの3つの菌が重要で、これらではしばしば血便がみられます。その他、腸炎ビブリオ、ウェルシュ菌、セレウス菌、エルシニア菌、エロモナス菌、プレシオモナス菌なども原因になります(表20)。赤痢(せきり)菌、コレラ菌は、主に海外においての感染です。

赤痢菌、病原大腸菌は少量の菌量でも感染が起こるためヒト‐ヒト感染を来します。ブドウ球菌による食中毒は、産生された毒素により、嘔吐、腹痛、下痢が生じます。

その他、抗菌薬使用時に生じる特殊な腸炎として、クロストリジウム・ディフィシルによる偽膜性大腸炎、クレブシエラ・オキシトカによる出血性腸炎、MRSAによる腸炎があり、抗菌薬関連下痢症と総称されます。

症状の現れ方

潜伏期は菌によって異なりますが、早いものでは数時間から、多くは5日間程度までの潜伏期のあと、腹痛、嘔吐、発熱、下痢(水様便、粘血便)などがみられます。細菌性下痢症は夏季に多く、ウイルス性胃腸炎よりも発熱、腹痛の程度が強く、しばしば血便を認めます(表20)。

O157による場合には、とくに腹痛が強く、血液そのもののような血便が出ることもあり、重い合併症として、溶血性尿毒症(ようけつせいにょうどくしょう)症候群が小児では6~7%にみられます。この場合は、下痢発症後平均5~6日で、顔色不良、黄疸(おうだん)、出血斑、浮腫(ふしゅ)、血尿、尿量減少、頭痛、不眠などの症状が現れます。

検査と診断

便の細菌培養を行い、原因菌を突き止めます。O157については、便の毒素や菌体抗原を直接検出する方法もあります。菌の種類によりますが、血液検査では白血球の増加、CRP値の上昇などの炎症反応が認められます。

治療の方法

対症療法として、脱水があれば、経口的あるいは点滴で補液をします。生菌整腸薬を投与しますが、強力な下痢止めは使いません。抗菌薬使用の必要性は、菌の種類、重症度、年齢によって異なりますが、小児では使用する場合が多くなります(表20)。

病気に気づいたらどうする

発熱、腹痛、下痢があり、便に血液らしきものが混じっていたら細菌性下痢の可能性が強いことから、医療機関を受診して、便の細菌検査を受ける必要があります。周囲に同様の症状の人がいる場合には、食中毒を考える必要があります。

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