病気事典[家庭の医学]
うぃるそんびょう(せんてんせいどうたいしゃいじょうしょう)
ウィルソン病(先天性銅代謝異常症)
ウィルソン病(先天性銅代謝異常症)について解説します。
執筆者:
山形大学医学部小児科学講座教授
早坂 清
どんな病気か
銅は体内のあらゆる組織に存在し、重要な役割を果たしています。しかし、異常に蓄積すると有害な作用を示します。ウィルソン病では、銅を輸送する蛋白(ATP7B)の遺伝子異常により胆汁中への排泄が障害され、体内とくに肝、脳、腎に銅が蓄積し、それぞれの機能が障害されます。
症状の現れ方
一般的には、5歳以降に肝機能障害を起こします。気づいた時にはすでに肝硬変(かんこうへん)を起こしていることが多いのですが、検査で異常が検出されてもほとんど自覚症状はありません。病気が進行し、はじめて全身倦怠感(けんたいかん)、黄疸(おうだん)、肝腫大(はれて大きくなる)、腹水貯留(ふくすいちょりゅう)(たまる)などが現れます。肝機能障害が潜行し、劇症肝炎(げきしょうかんえん)や溶血(ようけつ)発作で気づくこともあります。10歳以降に、脳が障害され、ろれつが回らない、手の震え、書字の乱れ、不随意(ふずいい)運動(意思とは無関係な体の動き)、歩行障害などが現れます。腎臓も障害され、血尿なども認められます。
検査と診断
肝機能障害、とくにコリンエステラーゼの低下や凝固能の低下など肝硬変を示す異常がみられます。特異的な徴候として、血中セルロプラスミンや銅の濃度が低く、銅の尿中排泄が増え、肝における銅の蓄積が確認されます。病初期には認められませんが、銅は角膜にも沈着し、カイザー・フライシャー輪が認められます。
治療の方法
銅の排泄を促すために、食間にキレート剤(ペニシラミン、トリエン)を経口投与します。また、銅の吸収を抑えるために、銅の含有の少ない食事をすすめ、また食後に亜鉛(あえん)を投与します。重度の肝硬変や劇症肝炎を生じた場合には、肝移植療法も有効な治療法として選択されます。
病気に気づいたらどうする
肝疾患の専門医か、先天性代謝異常症を専門とする医師による診察が必要です。
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