病気事典[家庭の医学]
しんせいじかんえん
新生児肝炎
新生児肝炎について解説します。
執筆者:
順天堂大学医学部小児科学先任准教授
大塚宜一
原因は何か
原因は不明です。肝炎ウイルス(A型・B型・C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルスなど)や、その他の明らかな感染症、胆道閉鎖症(たんどうへいさしょう)、総胆管拡張症(そうたんかんかくちょうしょう)、新生児胆汁(しんせいじたんじゅう)うっ滞(たい)を示すシトルリン血症を含む代謝性疾患、胆汁酸(たんじゅうさん)代謝異常症などを除外した、原因不明の、新生児期から認められる肝機能障害です。
症状の現れ方
新生児に現れる黄疸(おうだん)(新生児生理的黄疸)が、生後1カ月を過ぎても消えずに長引き、便の色が淡黄色~灰白色を示すことから異常に気づき、医療機関を訪れることが多くみられます。診察や検査結果から肝臓の腫大、眼球結膜や皮膚の黄染(おうせん)(黄疸)、肝障害が認められます。これらの症状は、一般的には生後2カ月以内に現れます。
肝臓で作られ脂肪の吸収などに必要な胆汁酸や、ビリルビンを含んでいる胆汁が、肝障害のため肝臓から十二指腸への排泄が停滞している状態(胆汁うっ滞)が長期にわたると、脂肪吸収障害に伴う脂溶性(しようせい)ビタミンや必須脂肪酸(ひっすしぼうさん)の欠乏を起こし、成長障害や出血傾向を伴うこともあります。また、黄疸(この場合、直接ビリルビンが血液中に増加)も徐々に強くなり、濃緑黄色の皮膚色を示してきます。
検査と診断
新生児肝炎の診断は、ほかの胆汁うっ滞性疾患を除外することから始まります。とくに、肝外胆汁うっ滞症である胆道閉鎖症および総胆管拡張症との区別を中心に、ウイルス感染症、代謝性疾患、内分泌性疾患などの可能性を否定していきます。
とくに胆道閉鎖症は、生後早期に診断し手術をする必要があるので重要です。両者の区別としては、腹部超音波検査やMRI検査による胆嚢(たんのう)および肝内胆管(かんないたんかん)の確認、肝胆道排泄シンチグラフィなどを行い、胆汁の消化管への排泄を確認できたら胆道閉鎖症ではなく、新生児肝炎の可能性が高くなります。
さらに、経皮的肝生検を行い、組織学的に多核巨細胞(たかくきょさいぼう)など特徴的所見を確認し、新生児肝炎と診断します。
治療の方法
新生児肝炎の95%は1歳までに治ります。しかし、一部の例で急速に肝障害が進行し、死に至る場合があるので注意が必要です。
内科的治療薬として、胆汁うっ滞に対してウルソ酸、肝細胞の庇護薬(ひごやく)としてタウリンなどがよく投与されます。そのほか、高度の胆汁うっ滞を認める場合は、ステロイド薬による治療を行うこともあります。
ステロイド薬に関しては、長期投与により感染症に対する免疫力の低下、糖や骨代謝(こつたいしゃ)障害、肥満や低身長などの副作用もあるので、期待される治療効果と合併症に関して十分考慮したうえで治療法が選択されます。
病気に気づいたらどうする
黄疸と灰白色便が長引く場合は、すぐに小児科医に相談してください。胆道閉鎖症が否定され、新生児肝炎と診断されれば多くの例で予後は良好ですが、肝障害が長引く場合もあるので、血液検査などによる定期的な評価が必要になります。
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