病気事典[家庭の医学]

しんきんしょう

心筋症<子どもの病気>

心筋症<子どもの病気>について解説します。

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どんな病気か

心筋症とは、心臓の機能異常を伴う原因不明の心筋(心臓の筋肉)の病気で、主なものに肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型(こうそくがた)心筋症があります。(図17)にそれぞれの心筋症の特徴を示しました。

診断は、心電図の変化や心エコーなどの画像診断、心臓カテーテル検査、心筋生検(心筋の組織の一部を採取して検査)などで行います。

(1)肥大型心筋症

心筋が非対称的に肥大する病気です。筋肉が肥大すると収縮する力は保たれますが、筋肉が厚いので伸びなくなって拡張が困難になります。約半数に家族歴があり、最近、その人たちのなかで心筋を構成する遺伝子の異常が報告されています。また、心室中隔(ちゅうかく)が肥大して左心室から大動脈への通路が狭くなったり、僧帽弁(そうぼうべん)がきちんと閉まらなくなって血液の逆流がみられることもあります。

症状は、疲れやすい、運動時の息切れ、胸痛、胸部不快感、失神、めまいなどのほか、不整脈がみられることがあります。一方、無症状で心電図の異常や心雑音から偶然発見されることもあります。

予後は、他の心筋症より比較的良好ですが、突然死があり、突然死の家族歴や失神の前歴、心室性不整脈などとの関連が示唆されています。また、徐々に心臓が大きくなり、後述する拡張型心筋症のように収縮能が低下して心不全が増強する場合も予後は不良で、心臓移植の適応となることがあります。

本症と診断された場合は、血行動態を悪化させないように激しい運動はひかえる必要があります。また、症状がある場合には、その程度に応じて薬物療法や肥大した心筋による狭窄(きょうさく)を解除する外科手術などを行います。また、不整脈には薬物療法やペースメーカーによる治療なども行われています。

(2)拡張型心筋症

心室筋(しんしつきん)が薄くなって収縮する力が低下し、心室全体が拡大する病気です。原因は不明ですが、いろいろな心筋疾患の終末的な病態と考えられています。

症状は、疲れやすい、呼吸困難、浮腫(ふしゅ)(むくみ)などの心不全の症状が主です。また、不整脈を伴う場合もあります。

治療は、まず過労、感染症、塩分や水分の過剰摂取などの心不全の増悪因子を避けることです。薬物治療としては利尿薬、強心薬、血管拡張薬などのほか、β遮断(ベータしゃだん)薬などが使われます。不整脈の治療が必要になる場合もあります。外科的治療としては、左心室心筋を一部切除するバチスタ手術などがあります。

予後は一般的に不良で、治療に抵抗する重症心不全を伴った場合は心臓移植の適応となります。

(3)拘束型心筋症

前記2つの心筋症のような心筋の著しい肥大や薄さはありませんが、心筋が拡張しづらくなる心筋症です。そのため、心室に血液を送っている心房が非常に大きくなることが特徴です。3つの心筋症のなかでは、最もまれな病気です。

症状は、疲れやすい、呼吸困難、肝臓腫大、浮腫(むくみ)などがみられます。

治療は、心不全に対する薬物療法が中心ですが、予後は一般的に不良で、心臓移植の適応となる場合もあります。

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