病気事典[家庭の医学]

きょうまくえんとのうきょう

胸膜炎と膿胸

胸膜炎と膿胸について解説します。

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どんな病気か

胸膜は、肺の表面をおおう臓側(ぞうそく)胸膜と胸壁にある壁側胸膜からなり、その間を胸膜腔(きょうまくくう)といいます。胸膜腔には少量の液体(胸水(きょうすい))があります。胸膜炎とは胸膜に炎症が起きた状態で、その多くの場合、胸腔に滲出液(しんしゅつえき)がたまります。

胸膜炎のうち、炎症が細菌性によるもので、胸水が膿性(のうせい)で著しく混濁している場合を膿胸といいます。

原因は何か

胸膜炎の原因となる病気にはいろいろありますが、小児科領域では肺感染症に伴うものが大半で、マイコプラズマ肺炎では、約20%に胸水貯留があると報告されています。

肺炎の炎症が臓側胸膜に及ぶと、毛細血管の透過性が亢進(こうしん)し、そのため胸水がたまり、炎症細胞が胸腔内に進入します。さらに炎症が進むと胸水がさらにたまります。また、そこに細菌が侵入すると膿胸となります。

膿胸の原因としては、かつては黄色ブドウ球菌が多かったのですが、近年ではまれになってきています。

膿胸では、最終的には胸膜で線維芽(せんいが)細胞の増殖が起こり、皮膜が形成されます。皮膜により、膿胸のある肺は弾性を失い、再膨張(ぼうちょう)が阻害されるようになります。

症状の現れ方

胸膜炎の症状として胸痛(咳(せき)や深呼吸で強くなる刺すような痛み)、胸部絞扼感(こうやくかん)(締めつけられるような感じ)、呼吸困難などがあります。胸水の貯留が大量になると呼吸困難が進行します。膿胸では、胸痛は少なくなります。

検査と診断

胸部X線やCT、超音波検査が胸水の確認に有用です。胸水がある程度以上たまっている場合には、胸腔穿刺(きょうくうせんし)(管を刺す)をして胸水を採取します。細菌学的検査、病理学的検査、生化学的検査を行い、原因を検索します。

治療の方法

まず胸膜炎を起こした原因疾患の治療を行います。ウイルスや肺炎マイコプラズマによる場合は、胸膜炎の原因になった肺感染症の治療で改善することが多く、実際に胸腔穿刺まで行うことはほとんどありません。

胸水が多量にたまり、呼吸困難を起こしているような場合には、胸水の排液を行います。膿胸では、胸腔穿刺液から行った細菌検査の結果をもとに、抗菌薬を投与します。

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