病気事典[家庭の医学]
たいべんきゅういんしょうこうぐん
胎便吸引症候群
胎便吸引症候群について解説します。
執筆者:
新潟市民病院総合周産期母子医療センター新生児科副センター長
佐藤 尚
原因は何か
子宮内で胎児が仮死に陥ると、腸の蠕動(ぜんどう)運動が一時的に活発になり同時に肛門括約筋が緩(ゆる)みます。そのために胎便が排泄され、羊水が胎便で混濁(こんだく)します。出生後に呼吸を開始する時に、口のなかにたまっていたにごった羊水を肺に吸い込んでしまうことがあります。そのために気管支が胎便でふさがり、呼吸困難やチアノーゼを起こします。また、胎便は肺組織に対して刺激性をもちますので、肺炎も起こします。
症状の現れ方
出生直後から呼吸が速い、陥没呼吸(息を吸い込む時に助骨の間や胸骨の下がへこむ呼吸)、呻吟(しんぎん)(息を吐く時にうなり声を出す)などの呼吸障害がみられます。酸素がうまく取り込めないのでチアノーゼが続きます。皮膚や臍帯(さいたい)は胎便によって黄色く着色しています。胸はビア樽のように前後にふくらみます。
治療の方法
呼吸障害の程度が軽ければ酸素投与だけでよくなることもありますが、肺に管を入れて、気管の洗浄や、人工呼吸器による呼吸管理を必要とすることもあります。肺炎に対しては抗生剤を使用します。気胸を合併しやすく、胸腔穿刺(きょうくうせんし)(針で刺す)や持続吸引が必要になることがあります。
また、遷延性肺高血圧症(せんえんせいはいこうけつあつしょう)を合併し、強いチアノーゼと循環不全を起こすこともあります。その際は人工呼吸器、強心薬など多くの薬剤を使って強力な治療を行う必要があります。また、仮死による症状として低血圧やけいれんなどの多様な症状が現れることがあるので、それらに対する治療も必要になります。
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